IoTの推進のために

 では、どのように「IoTを活用した製造現場の改善」と「IoTを活用したスマート工場の実現」を進めていけばよいのでしょうか。複雑なこのIoT化の推進に対し、私は数多くの支援を実施しています。しかし、当初はなかなかうまく進めることができませんでした。そこで試行錯誤した結果、顧客が自ら考え、推進できるような「フレームワーク」を作成しました。フレームワークは、日本語では「枠組み」や「骨組み」などと訳されます。このフレームワークを使えば、見えない問題や課題が浮かび上がります。加えて、上記にも記載したIoTの目的と手段(IoTに関する技術)を整理することができます。

製造現場改善フレームワーク

 製造現場改善フレームワークは、IoTによる製造現場の課題対応や生産改善を実施するために使用します。このフレームワークは現場の状況に合わせ、課題を「作業」「設備」「製品」「ロボット/自動化」「工場」などに分類します。その後、モニタリング→制御→最適化→自律性というIoTの段階とともに目的と手段を整理します。

スマート工場推進フレームワーク

 スマート工場推進フレームワークは、IoTを活用したスマート工場を推進するために使用します。内容は、本コラムの内容を含めてスマート工場の推進に必要な内容を網羅し、整理するものとなっています。このフレームワークを活用することで方向性が定まり、全社一丸となったスマート工場の推進が可能となります。

 検討項目は、[1]目的、[2]接続、[3]データの有効活用、[4]基礎項目、[5]業務、[6]ITシステム、[7]技術、の大きく7つに分類します。質問内容に対して必要事項を埋めていく形式を取っています。また、自社の状況に合わせ、このフレームワークをカスタマイズすることも可能です。

おわりに

 このコラムではIoTを推進するための組織体制の詳細については触れませんでしたが、スマート工場の推進に必要な項目は上記のフレームワークで網羅しています。

 私は本コラムの第1回で、製造業がIoTを推進する上で次の3つを分けて検討する必要があると話しました。

[1]IoTによる製造現場の改善
[2]スマート工場の実現
[3]ビジネス設計(ビジネスモデル作成)

 [1]は生き延びるための仕組みづくり、[2]は負けないための仕組みづくり、[3]は勝つための仕組みづくり、と言えます。どれも企業にとって必要なことばかりです。今からでも遅くありません。IoTを活用しましょう。

 本コラムが製造業の方たちに少しでも役立ち、日本企業の活性化につながることを祈って、筆をおきます。