AIを活用した改善の流れ

①業務分析
 まず、製造・生産業務を理解し、どのデータを収集するかを考えます。また、「④データ分析」の結果を、「①業務分析」の結果と照らし合わせ、実際の改善活動になる「⑤結果の活用」につなぐ必要があります。

②データ収集
 「①業務分析」から考え出されて新たに収集するデータもありますが、既に収集済みのデータもあるはずです。

③データ蓄積 
 ポイントとなるデータをいかに大量に蓄積できるか(他社が持っていないデータを活用できるか)がポイントになります。

④データ分析
 AIによる分析で、「①業務分析」によってKPI(改善の指標)を設定し、「変えてもよい部分」と法律や道義に照らして「変えてはいけない部分」を設定(モデル設定)して、最適解を算出します。ポイントは何を「問い」にするかです。

⑤結果の活用
 その最適解を生産現場で改善結果として採用しますが、生産現場を動かす心理面の問題がネックになります。つまり、これまで長年かけて標準化して「常識」として実施してきたことを変えるという結果が出た場合などです。生産現場は、「変えた結果、問題が発生した場合はどうするんだ?」といったことを主張します。特にAIのディープラーニングを採用した場合は、結果の根拠が不明になるため、こうした混乱は、ほぼ間違いなく発生します。

 従って、「⑤結果の活用」は生産現場の作業者が介在するのではなく、自動化するのが望ましいと思われます。この部分の改善も自動化できると、一度「①業務分析」を実施した後は、②→③→④→⑤→②…と全て自動で改善が回るようになります。

 囲碁や将棋の世界では、「①業務分析」はほとんど必要がなく、「②棋譜といわれる実績データを多く収集」し、それらの「③データを蓄積」することで効果が出ます。「④データ分析」においても、囲碁や将棋のルールを与えて「変えてはいけない部分」と「変えられる部分」とから即座に最適解を出すことができるので、「⑤結果の活用:につながります。しかし、実際の生産現場では、全てのステップにおいて、囲碁や将棋ほど単純ではなく、この流れを取りまとめるデータサイエンティストなどの担当者のスキルが重要となります。

 ロボットによる自動化およびAIが進むと、ものづくりの本質を理解しているエンジニアが減少し、予期せぬ問題や社外事故が発生した場合に対応がとれないことが考えられます。IoTの推進とともに、人材育成は継続して実施する必要があります。そもそもAIで必要な関連情報が異常であるケースでは集まりにくく、AIの効果が出せないという問題もあります。

 次回は、つながる工場についてお話します。