高安 篤史=合同会社コンサランス、株式会社サートプロIoT技術講師、中小企業診断士
高安 篤史=合同会社コンサランス、株式会社サートプロIoT技術講師、中小企業診断士
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 事業に役立つ知見などを導くためのデータと解釈され、一般に通常のデータベースでは処理ができない巨大なデータ。これがビッグデータです。具体的には次のことを指します。

[1]オープンデータ〔官公庁の発表データ、WebやSNS(Social Networking Service)などのデータ〕
[2]企業内の既存データ(生産システムなどのデータ)
[3]企業内の新規入手データ(センサーなどのデータ)

 これらのビッグデータのうち、製造業のIoT(Internet of Things)による現場改善は、まず[2]について考える必要があります。[2]に関連するデータとしては、次のようなものが考えられます。

・生産関連のデータ
・企業の経営に関連するデータ
・顧客に関連するデータ
・部品・材料メーカーに関連するデータ
・製造現場のノウハウ

 これらの情報を組み合わせて人工知能(AI)を活用することで、生産現場のベストプラクティス(ある結果を得るために最善の方法や手法などのこと)を発見できます。  

ビッグデータの段階

 ビッグデータは既に電子化されていると思われがちです。しかし、製造現場におけるIoTに関連するデータの中には、電子化されていないけれど有効なデータである場合があります。そこで、先の[2]の企業内の既存データになる可能性があるデータを段階的に考えると以下のようになります。

(1)作業者などの頭の中に内在している暗黙知データ(暗黙知であり、作業者も気付いていないデータ)
(2)作業者などの頭の中に内在している形式知データ(形式知として作業者自身が気付いているデータ)
(3)紙ベースで管理されているデータ
(4)電子化されているが、他では全く使われていないデータ
(5)電子化された情報として、USBメモリーなど人の作業を伴って他へ移行されるデータ
(6)電子化された情報として自動で他へ転送されるデータ(ただし、リアルタイム転送ではない)
(7)電子化された情報としてリアルタイムに他へ転送され共有されるデータ

 (2)以降は、電子化した後にどのようにつなげればよいかを技術的に考えれば、接続は可能です。ポイントは(1)のデータです。ここには大きなノウハウや知恵が含まれています。これは暗黙知であるため、簡単には(2)の形式知データにはできないと思われがちです。しかし、AIを使うことでビッグデータとして掘り起こすことが可能になります。

 具体的には、作業などを動画などで収集し、そのデータをAIで分析することで、一気に(7)のデータに進化させることができます。スマート工場では(7)のデータが必須になります。このように、ビッグデータは従来のRDB(リレーショナルデータベース)におけるSQL処理ではなく、非構造データ(テキストファイルや画像、動画データなど)が中心となります。