ビッグデータの失敗例

 [3]の企業内の新規入手データにより、設備の保守などを実施することも可能になります。しかし、先に触れた(1)の暗黙知データを(2)の形式知データにすることは、[3]の企業内の新規入手データに分類してもよいと思います。この[3]のデータには、取得できれば明らかに改善効果が見えるものの他に、データを取得してみないと有効なデータが存在するかどうかを判断できない場合があります。しかし、この“後付け効果”がIoTの本質だと捉えると、IoTが見えてきます。

 すなわち、IoTでは「データを取得して初めて価値があるかどうかが分かる」ということです。加えて、「改善を実施した後に、初めて有効なデータを取得できることもある」ということです。

 ビッグデータに関する失敗例は、とりあえず何でもデータを取得しようとして収拾がつかなくなることです。それよりも、「小さく始めるビッグデータ」という考えが必要です。このために、データ収集時には「仮説」を立てると良いでしょう。「そのデータを取得すると、このような結果が見える。その結果、このような改善に結びつく」といった仮説を立てることで、むやみにデータを取得することがなくなります。加えて、仮説と異なる結果になった場合に「なぜだろう」と考えることで、人も育っていきます。

 詳しくはAIの回で解説するとして、IoT時代の情報に関連した差異化の大きなポイントは、(a)自社にしかないデータと(b)新しいデータの収集、(c)データの融合の3つと言われています。IoT時代は「情報を征するものがビジネスを征する」ことになります。

 次回は、スマート工場とAIを取り上げます。