高安 篤史=合同会社コンサランス、株式会社サートプロIoT技術講師、中小企業診断士
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高安 篤史=合同会社コンサランス、株式会社サートプロIoT技術講師、中小企業診断士
 VR・ARとロボット、これらが今回のテーマです。キーワードは仮想現実(VR)・拡張現実(AR)の活用。製造現場における効率改善の隠れた目玉となるのがVRとARなのです。VRは「仮想の世界を現実のように体験すること」と、ARは「現実世界で人が見える情報などに別の情報を加えること」とよく定義されます。では、なぜこれらが製造現場での効率改善の隠れた目玉となるのでしょうか。

 VRは最近、ゲームなどでも多く使われて一般への知名度が高まってきました。製造現場では、「ヘッドマウントディスプレーを使った作業状況の疑似体験(作業員の教育)」や、「工場や物流の動きの仮想化(シミュレーションを含む)による確認(生産効率化・生産同期)」などに活用されています。

 加えて、スマート工場の1つの典型である「デジタルツイン」(第8回で詳細を説明予定)につながる大きなキーテクノロジーです。その優れた点を簡潔に述べるとこうなります。「仮想の世界で工場の全てが動き、それを作業者である人が疑似体験できる。そのため、実際にものを造った後に発生する問題を事前に把握したり、対策を講じたりすることができる」──。

 一方、ARでは何ができるのでしょうか。実はこちらもゲームで有名になりました。現実世界にアニメのキャラクターなどを登場させる位置情報ゲームのアプリケーションソフトウエアです。ARも製造現場などの改善に大きな効果が期待できます。

 例えば、スマートグラスやタブレット端末を利用し、人が実際に見る情報やカメラが写した情報に、工場や設備のデジタルな追加情報を加える。これにより、「見える化」やシミュレーション、保守作業を可能にするといった事例があります。VRはあくまでもバーチャル(仮想)の世界を体験するのに対し、ARは現実の世界に画像や動画を含む情報を付加するため、現実世界の製造現場などに合わせた作業改善が可能となります。

産業用ロボットとスマート工場

 皆さんの会社はロボットを有効に活用できているでしょうか。ここでいうロボットは、製造現場で稼働する産業用ロボットのことです。人の生活空間でサービス補助を主目的とした人型のパーソナルロボットとは異なります(パーソナルロボットも家庭内や店舗などでの設置が増えています)。自動化による生産効率の改善のためにロボットを使うことはこれまでも重要でした。では、IoT時代のロボットの役割はどのようなものになるのでしょうか。

 従来はロボットに作業させる際に、プログラミングにより動作を決めていました。最近では、作業者がロボットのアームや工具を直接動かして動作を教える「ダイレクトティーチング」が、作業の種類によっては主流になりつつあります。しかし、これも作業の動作を人が直接指示している点は変わりがありません。また、これまではロボットによる自動生産は大量生産に効力を発揮してきました。

 これに対し、スマート工場のロボットは次のように発展していくと考えられます。[1]人との協働、[2]ロボットの移動、[3]ロボットの自走、[4]ロボットの自律、の4ステップを経る発展です。