高安 篤史=合同会社コンサランス、株式会社サートプロIoT技術講師、中小企業診断士
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高安 篤史=合同会社コンサランス、株式会社サートプロIoT技術講師、中小企業診断士
 今回は、IoTによる製造現場改善を、生産設備とセンサー、産業用ネットワークからの視点で解説しましょう。

設備保守とセンサー

 IoTの効果を説明する際に、まず挙がるのは「生産設備の保守を、センサーで取得したデータを活用することで効率的に実施した事例」ではないでしょうか。 設備にもよりますが、電流や振動、熱、ニオイなどをセンサーで計測することで、故障の予兆を判断できます。これにより、故障する前に部品を交換し、生産が停止することを回避できるのです。

 加えて、従来は設備の部品の耐用年数を余裕をもって設定していましたが、IoTの保守により適度な耐用年数で済むようになります。従って、過剰な投資を抑えることが可能で、コスト削減を期待できます。さらに、ベテランの保守員の匠の技ともいうべき長年の経験に基づく「勘」に頼った保守作業から脱却することができます。そして、こうしたデータに裏付けされた論理形成は人材育成などにも効果が発揮できます。

設備の稼働状況

 設備の保守と共に、設備の稼働状況などを監視することもIoTの効果の1つです。しかも、既存の設備のセンシングも可能です。例えば、稼働状況を表示するランプを光センサーで確認したり、表示パネルの電流をチェックしたりするといった方法でセンシングします。

 安価な手段もあります。耐久性に注意する必要はありますが、ワンボードマイコン「Arduino」やシングルボードコンピューター「Raspberry Pi」などの低価格な制御装置を使ったセンサーキットを利用することも可能だからです。

産業用ネットワーク

 生産設備をつなぎ、設備のデータを取得するためには、産業用ネットワークに関連する知識も必要になります。産業用ネットワークの世界で通常の接続が利用できない理由の1つは、生産現場の環境に問題があるからです。具体的には、粉じんや油、ノイズなどが影響していることが考えられます。この対策のため、2重シールドタイプや耐油タイプなどのケーブルが必要となる場合もあります。

 図は産業用ネットワークを簡易的に表したものです。

図●産業用ネットワーク
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図●産業用ネットワーク
(注:あくまでも簡易的に表したものであり、各階層の呼び名はいろいろ存在する。各種標準ネットワークは主な利用に対して記載をしている)