IoTの目的と手段

 IoTの推進では、「何を実施するか」ではなく、「何のために実施するのか」を常に考えなければなりません。

 今、IoTを推進している製造現場の多くは、「ものをつなぐ」ことや「データを蓄積する」ことに捉われています。手段についての興味ばかりが先行してしまっているのです。その結果、目的を忘れてしまい、最終的に成果に結びつかない状況が散見されているのです。

 以下に、製造業のIoT活用の最終的な目的と、その手段について列挙しましょう。

[目的]
①開発・設計効率化、②設備予防保守、③適切な生産量、④リードタイムの短縮、⑤生産効率化、⑥適正在庫、⑦製品検査方法の改善、⑧生産同期、⑨工場レイアウト最適化、⑩問題の原因究明(変化点の把握)、⑪トレーサビリティー/影響範囲特定、⑫設備保守(点検)、⑬省エネ、⑭リアルタイムマネジメント、⑮作業の効率化、⑯作業ミス防止、⑰作業員・人材教育、⑱作業員の健康管理、⑲物流効率化、⑳製品の予防保守、㉑製品保守(点検)、㉒製品の付加価値向上

[手段]
①センサー、②カメラ、③エッジ/デバイス、④通信、⑤生産システム、⑥ロボット、⑦スマートフォン/タブレット端末、⑧シミュレーション、⑧ウエアラブルデバイス、⑨VR/AR、⑩アプリケーション、⑪ビッグデータ、⑫人工知能(AI)、⑬クラウド、⑭ドローン、⑮3Dスキャン、⑯3Dプリンター、⑰小型ボードコンピューター、⑱ICタグ

 加えて、こうしたIoTに関する技術以外にも、IoT推進では基盤(基礎)ともいえる以下の重要なポイントが存在します

①戦略、②人材育成、③プロセス改善、④コラボレーション、⑤セキュリティー、⑥法規

 本コラムでは、もちろんIoTの手段について触れますが、目的を常に意識してもらえるような補足について可能な限り述べていきます。

 さて、IoTが普及した20年後は、一体どのような世界になっているでしょうか。工場はどうなっているでしょうか。SFの世界? いえ、20年後の人たちにとってIoTはごく普通のものであり、不思議なものではないのです。現在、パソコンやスマートフォンを当たり前に使い、ネットワークが使えなくなった途端に仕事が止まってしまうことと同じように、20年後はIoTが当たり前の世界になっています。つまり、IoTがなければ会社の仕事が止まり、ものを製造できなくなる世界になるのです。

 このコラムでは、製造現場におけるIoTの関連システムと共に、製造業に関連するIoTの技術について検討します。そして、最後には製造業におけるIoT導入を成功させる架け橋ともいえる「フレームワーク」について話していきたいと思います。