私たちが普段、買い物でよく利用するAmazon。その運営会社である米Amazon.com社の最高経営責任者(CEO)であるJeff Bezos氏が出資しているロケット開発企業があります。それが、米Blue Origin社です。同社は垂直離着陸型の「New Shepard(ニューシェパード)」という名称の有人宇宙ロケットの開発を進めており、既に高度100kmの宇宙空間への弾道飛行のテストフライトに何度も成功しています。

 このように米国では、米航空宇宙局(NASA)などによる税金を使った国家事業ではなく、IT企業のCEOの出資などによる民間資本によって、ロケットや宇宙船の開発が進められています。つまり、米国では宇宙開発の民間化がどんどんと進んでいるわけです。

 このような宇宙開発の民間化は、GPS(全地球測位システム)やインターネットとよく似ています。GPSもインターネットも、元々は米国の軍隊のための防衛技術の1つでした。その技術が研究機関や大学、民間企業に開放されたことで、一般人が利用できるほどに広がりました。

 宇宙開発の技術や有人宇宙飛行も同じです。もともと軍事開発のために進化した宇宙技術が研究機関に広がり、大学に広がり、民間企業に広がり、いよいよ一般人が宇宙を利用し、宇宙飛行を行える時代になってきたのです。一般人をターゲットにするということは、より安く、より安全に、そしてよりサービスの良いものにしないと市場は広がりません。米国では様々な民間企業が宇宙開発を行うことで競争原理が働き始め、より進化したロケットや宇宙船が作られつつあります。

 そこで今回は、宇宙開発の民間化を象徴する、民間宇宙企業の代表格であるBlue Origin社の宇宙船「New Shepard」について紹介します。

Blue Origin社の「New Shepard」(写真:Blue Origin社)
Blue Origin社の「New Shepard」(写真:Blue Origin社)
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