技術系メディアのみならず一般誌でも、IoT(Internet of Things)やCPS(Cyber Physical System)といった言葉を目にする機会が増えてきた。センサーで捉えたデータを収集し、蓄積したデータを解析、そして現実世界のサービス向上や工場の生産性改善などに生かす事例は増加の一途をたどっており、「IoTやCPSに関わらない業界は無い」といえる状況になりつつある。

 データを収集、蓄積・解析、現実世界への実装というデータ活用のフェーズにおいて、昨今はデータを人工知能(AI)などで解析する取り組みに注目が集まることが多い。だが、同様に目が離せないのが、このフェーズの最上流に位置する収集、つまりセンシング技術である。様々なセンサーが市場に登場しているものの、いまだ検知できないモノ、つまりデータ化し切れていないモノがある。まだ“見えない”モノを“見える化”するセンサーを生み出すべく、開発熱が高まっている。

 従来の手法では見えない、あるいは見るのに手間を要するモノをセンシングする技術の研究開発に力を入れているのが、産業技術総合研究所(産総研)である。産総研は、データを収集、蓄積・解析、現実世界への実装という各フェーズで様々な研究開発を進めてきた。今回、本コラムではデータ収集に焦点を合わせ、産総研が研究開発し、実用化に近い特徴的なセンサー技術のうち、下記の5例を紹介する。

(1)極めて低濃度のウイルスをケタ違いに早く見つけ出すバイオセンサー

(2)腸内環境や肺がんなどを呼気の臭いで捉えるガスセンサー

(3)人の動きや呼吸を非接触で検知できるフィルム状近接センサー

(4)無給電で振動データを無線送信できるインフラ監視向け圧電MEMSセンサー

(5)産総研が保有する精密計測技術/校正技術を生かした加速度センサーの開発支援

 なお産総研によれば「センサーの実用化や技術移転に向け、企業などとの連携を強化したい。連携サポートの専門スタッフもいるので、具体的な相談でなくても、まずは連絡をいただきたい」とのことだ。

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