日本放送協会(NHK)は、2016年8月6日からブラジルで開催されるリオデジャネイロ五輪の開会式などについて、8Kスーパーハイビジョンの試験放送を行う。そこで使われるとされるのが、世界初の22.2マルチチャンネル音響に対応する音声中継車「SA-1」だ。タムラ製作所は、この22.2マルチチャンネル音響の集音・調整に必要な音声卓「NT900」をNHKと共同で開発、提供している。

22.2マルチチャンネル音響システムに対応する、音声中継車向け音声卓「NT900」。展示品は最小構成品で、実際の中継車に搭載したものは約1.5倍程度の大きさという。
22.2マルチチャンネル音響システムに対応する、音声中継車向け音声卓「NT900」。展示品は最小構成品で、実際の中継車に搭載したものは約1.5倍程度の大きさという。
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 22.2マルチチャンネル音響は、5.1チャネルサラウンドに続く音響システムで、基本的には上・中・下の3段階にスピーカーを配置し、3次元的なサラウンドを作り出す。具体的には22台のスピーカーに2台のサブウーファーを組み合わせている。22.2マルチチャンネル音響は、耳で感じられる限界を実現しており、これ以上はない「究極の音響」とされている。音声卓は、この22.2マルチチャンネル音響システムにおいて、どのスピーカーから音を発するかを設定するためのものだ。例えば、アナウンサーの声は前方中央から、観客の歓声は全体から、といったように設定できる。

 そこで、音声卓としてキモとなる機能が「3Dパンニング」だ。各スピーカーからの音量を調整することで、スピーカーで囲まれた3次元空間に仮想的な音像を作り出す。音声処理量が増えDSPの処理能力が必要になるのはもちろんのこと、3次元空間に対する操作を容易にすることも必要とされる。

 こうした22.2マルチチャンネル音響に対応する音声中継車向けの音声卓はなかった。海外メーカーの可搬品を基に一旦は開発が進んだものの、(1)大きすぎること、(2)操作性が悪いこと、がネックになっていたという。そこでタムラ製作所に開発案件として持ち込まれた。