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渡辺史敏の「米スポーツ産業ヘッドライン」

若者“テレビ離れ”に処方箋 NFL、NBAストリーミング強化

2018/01/11 05:00

渡辺 史敏=ジャーナリスト

 2017年12月、2つの米国の人気プロリーグでストリーミング配信に関連した動きがあった。まず、12月11日、米プロアメリカンフットボールNFLは携帯電話事業などを展開する通信大手、米ベライゾン・コミュニケーションズ社との契約を更新したことを発表した。

 ベライゾン社は2010年にNFLと公式スポンサー契約を結んでいたが、今回新たに2018年からの5年契約に至っている。契約料は年間5億ドル、総額25億ドルに上る模様だ。これまでの契約料は年2億5000万ドルと見られていたので倍増となった。

 この契約更新で、ベライゾン社は大きく戦略転換した。これまで同社はモバイル分野におけるストリーミングサービスで独占権を有していた。自社と契約しているモバイル端末向けにのみ、NFLの試合中継をストリーミング配信してきたのである。こうすることで、自社サービスへの誘客と顧客の囲い込みを図ってきた。

NFLの試合の様子(図:NFL)
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プラットフォーム利用者増へ戦略転換

 が、今回の新契約ではこの独占権を放棄したのである。その代わり、自社で展開しているストリーミングサービス「go90」と、2015年に買収した米AOL社と2016年に買収した米ヤフー社が合併して生まれた米Oath社が展開する、「Yahoo!」および「Yahoo! Sports」アプリを通せば視聴できるようにしたのだ。ベライゾン以外の携帯電話端末からでも視聴可能となっている。自社のプラットフォームの利用者を増やす戦略に転換したのだ。

 このストリーミングサービスは2018年1月から開始されており、2月4日に開催される「第52回スーパーボウル」を含め、現在開催中のプレーオフは全試合、さらに来シーズンからはレギュラーシーズンゲームもストリーミング中継されることになっている。

 ただし、日曜午後に開催される試合に関しては「イン・マーケット」と呼ばれる利用者がいる地域の地元チームの試合のみが視聴できる制限がかけられる。これは地元以外の地域の試合をテレビで視聴できるサービスの権利を、衛星放送のディレクTVと独占契約していることに配慮したものとみられる。また中継以外にも、試合のハイライト映像やNFLとベライゾン社が共同制作するオリジナル番組の配信も行われるということだ。

 この契約についてベライゾン社のローウェル・マックアダム会長兼CEO(最高経営責任者)は、「NFLは素晴らしいパートナーであり、大規模なモバイルスケールで、視聴者が楽しめるライブフットボールやオリジナルのNFLコンテンツを提供できることに興奮しています。この提携はファンにとって勝利であるだけでなく、“モバイルファースト”の経験を求めるパートナーと広告主にとっても価値があります」という声明を出した。広告モデルで収益を上げていく考えを示唆したのだ。

 NFLとしてもテレビ中継の不振は若者離れが一因と見ており、今回の契約で若者層に利用者が多いモバイルでのストリーミング視聴の拡大を狙ったものとみられる。

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