世紀の番狂わせとも称せられた大統領選挙を制し、2017年1月に第45代米国大統領に就任することが決まったドナルド・トランプ氏。“トランプ・ショック”が世界的に広がっているが、それはスポーツ界も無縁ではない。

 実はスポーツ界への影響はトランプ氏が共和党予備選挙に立候補した直後から続いている。人種差別的なものを筆頭に暴言が相次いだため、スポーツ関連企業がトランプ氏と距離を置く動きが目立ったのである。

PGAが「ワールド・ゴルフ・チャンピオンシップ・トーナメント」のメキシコシティへの移転を表明した際のリリース文(図:PGA)
PGAが「ワールド・ゴルフ・チャンピオンシップ・トーナメント」のメキシコシティへの移転を表明した際のリリース文(図:PGA)
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 米男子プロゴルフのPGAツアーは2016年6月、フロリダ州マイアミにあるトランプ氏所有のゴルフ・コースで開催されてきた「ワールド・ゴルフ・チャンピオンシップ・トーナメント」を2017年は「WGC-メキシコ・チャンピオンシップ」に改称してメキシコシティで開催することを決定した。これに対しトランプ氏はPGAを批判するコメントを出している。

 大手メディアも同様で、米スポーツ専門局のESPN社は7月に自局が主催した有名人が出場するゴルフ大会を直前になってトランプ氏所有のコースから別のコースに変更した。スポーツではないが、米4大テレビネットワークの一つ、NBCはトランプ氏が保有する企業と共同開催してきた「ミス・ユニバース」や有名リアリティ番組出演などの提携を打ち切っている。

 さらに個人的関係も取り沙汰された。米プロ・アメリカンフットボールNFLで優勝4回を経験しているニューイングランド・ペイトリオッツ所属のスター選手、トム・ブレイディは、トランプ氏とゴルフ友達として15~16年の親交があることが広く知られていた。このため選挙期間中にメディアはブレイディ氏に何度もトランプ氏を支持するのか、と問い詰めることになった。これに対しブレイディ氏は「常に考えているのはチームのために気を散らせたくないということ。それが自分の目標だ」などと、答えをはぐらかし続けたのである。

 そんななかトランプ氏は11月8日、投票前日の演説でブレイディ氏とペイトリオッツのビル・ベリチック・ヘッドコーチが自分を支持してくれていると公言する事態も起こった。これに対してブレイディ氏の妻で、ブラジル出身のスーパーモデル、ジゼル・ブンチェン氏はSNSで「支持はしていない」と投稿。その一方でベリチック・コーチは記者会見で、トランプ氏に支持を表明する手紙を書いたことを明らかにするなど混乱が生じる事態となった。

NASCARレースはトランプ支持

 対して、トランプ氏支持を前面に打ち出したのがモーターレースのNASCARである。トランプ氏や副大統領候補のマイク・ペンス氏の名前、さらには「アメリカを再び偉大にしよう」というスローガンをペイントしたレースカーを2回出場させた。NASCARのブライアン・フランス会長兼CEO(最高経営責任者)は、トランプ氏の選挙戦にも協力している。NASCARは米国南部の白人男性層で人気が高いとされており、その辺りも影響したようだ。
トランプ支持を表明したNASCARのプレスリリースサイト(図:NASCAR)
トランプ支持を表明したNASCARのプレスリリースサイト(図:NASCAR)
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 では、スポーツビジネス面の影響はどうだろうか。これまでメディアで報じられているように、トランプ氏は米国内外に17のゴルフ場を所有している。大統領選後、閣僚人事をニュージャージー州に所有するゴルフリゾートにこもって進めたことは日本でも報道された。

 それと同様に注目したいのが、トランプ氏が1980年代半ばにNFLの対抗リーグとして存在したUSFL(ユナイテッド・ステーツ・フットボール・リーグ)所属のニュージャージー・ジェネラルズのオーナーであった点だ。