2018年2月、冬季五輪が開催される韓国・平昌(ピョンチャン)でもう一つの国際大会「Intel Extreme Masters」が開かれる。米Intel(インテル)社がeスポーツ大会の運営団体ESL(Electronic Sports League)と提携して開催している大会シリーズの平昌大会で、もちろん冬季五輪の開催に合わせたものだ。

2018年2月に韓国・平昌で開催されるeスポーツの国際大会「Intel Extreme Masters」(図:Intel社)
2018年2月に韓国・平昌で開催されるeスポーツの国際大会「Intel Extreme Masters」(図:Intel社)
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 この大会で競技されるゲームタイトルは、リアルタイムストラテジーゲーム「Star Craft II」。世界中の誰でも参加できる予選がオンラインで既に開始されている。2017年12月内に中国・北京で準決勝が行われ、その後、平昌で決勝大会を開く予定だ。この模様は、五輪関連の動画を扱う「Olympic Channel」で配信されることも決まっている。

 さらに、ユービーアイソフトが12月7日に発売する平昌五輪などを舞台としたウインタースポーツゲーム「スティープ ロード トゥー ザ オリンピック」のデモンストレーションとして、五輪選手村に試遊台を設置する他、五輪に来場するファンやゲーマー向けの体験会や大会を実施するとしている。

「スポーツの未来に向けた技術の採用を加速」

 半導体世界最大手1のIntel社は、今、スポーツビジネスにまい進している“異業種”企業の代表例だ。2017年2月に開催された米プロアメリカンフットボールNFLの優勝決定戦「第51回スーパーボウル」のテレビ中継では、自社が保有するドローンや多数のカメラを使って生成する「360度の自由視点映像」などをアピールした。

*1 米ガートナー社は2018年1月4日、2017年の半導体売上高で、韓国Samsung Electronics社がIntel社を抜いて首位に立ったと発表した。

 そして6月には、IOC(国際オリンピック委員会)とパートナー契約を結んだことを発表。2024年までワールドワイド・スポンサーシップ・プログラムの「TOP(The Olympic Partner)」に、スポンサーとして加わった。今後5GプラットフォームやVR(仮想現実)、3D、自由視点映像などのコンテンツ開発、AI(人工知能)、ドローンなどの技術を提供し、五輪の発展に寄与していくとしている。

 Intel社のブライアン・クルザニッチCEO(最高経営責任者)は声明で「オリンピックムーブメントに参加し、Intelの革新的な技術を統合して世界中のファンのためにオリンピックゲームの経験を広めることができれば喜ばしい。オリンピックファミリーとの緊密な協力を通じて、世界最大のスポーツの舞台でスポーツの未来に向けた技術の採用を加速させたい」とスポンサーシップへの意気込みを語った。

 実は、eスポーツの五輪への進出については、競技に使われるゲームタイトルの残虐性などからIOCのトーマス・バッハ会長は否定的な発言をするなどしていた。しかし、Intel社がeスポーツにも積極関与することで、採用が前進するかもしれない。

スポーツAI企業に投資

 スポーツビジネス業界における、Intel社の積極攻勢の事例はほかにもある。傘下の投資企業であるIntel Capital社は2017年10月19日、AIや自動運転などでデータ処理にフォーカスした事業展開を行うスタートアップ企業15社に6000万ドル以上の投資を行うことを発表した。その1社に、スポーツに特化したAI技術を開発する米Trace社が含まれている。

Intel Capital社が2017年10月に投資を発表した、スポーツ専用のAIを開発するTrace社のホームページ(図:Trace社)
Intel Capital社が2017年10月に投資を発表した、スポーツ専用のAIを開発するTrace社のホームページ(図:Trace社)
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 ロサンゼルスに拠点を置くTrace社は、サーフィンなどの海上スポーツとスキーやスノーボードを対象に、小型センサーを開発。スキーであればどれぐらいの高低差と距離を滑ったか、さらに速度やジャンプの高さ、滞空時間などを測定できる。その様子を撮影した映像に測定したデータを自動的にシンクロさせて表示することも可能だ。

 競技動画とパフォーマンスデータが同時に見られることで、コーチなどが指導しやすくなりそうだ。同社の技術は今後、サッカーなど幅広いスポーツに横展開していくことが期待されている。