金12個、銀8個、銅21個。日本選手のメダルラッシュもあって、日本ではリオデジャネイロ五輪のテレビ放送は視聴率という面では成功に終わったという印象が強い。対して、米国では放映権を持つNBCユニバーサル(NBCU)社がテレビ放送とインターネットのストリーミング中継を実施したが、いずれも世界最多の金46個、総メダル数121を獲得したにもかかわらず、後退と躍進が入り混じった時代を象徴した結果となった。
リオ五輪の会場。日本選手の活躍もあって、日本ではテレビ放送が成功を収めたように見えるが、米国ではストリーミング中継への移行が鮮明に
リオ五輪の会場。日本選手の活躍もあって、日本ではテレビ放送が成功を収めたように見えるが、米国ではストリーミング中継への移行が鮮明に
[画像のクリックで拡大表示]

 まずテレビ放送だが、地上波のNBCを中心にケーブルチャンネルのBravo、CNBC、Golf Channelなど11のプラットフォームで、総放送時間6755時間にもわたって全28競技をカバーした。

 が、その結果はメーンのNBCで17日間の平均視聴者数が2750万人、家庭視聴率が14.9%に終わったのである。これは前回のロンドン五輪の3030万人、17.5%から大きく減った。

米NBCが公表した、米国での五輪放送の平均視聴者数。リオ五輪放送の平均視聴者数は2750万人と、前回のロンドン五輪から9.2%減った(表:NBCUniversal社)
米NBCが公表した、米国での五輪放送の平均視聴者数。リオ五輪放送の平均視聴者数は2750万人と、前回のロンドン五輪から9.2%減った(表:NBCUniversal社)
[画像のクリックで拡大表示]

 特に18歳から34歳の若者層は開催前から五輪離れが危惧されていたが、実際、この層の平均視聴率は5.3%で、前回の7.7%から減少する結果となった。

つまづきの始まりは開会式

 リオ五輪は米国のテレビ市場にとって有利な大会になるだろうと予想されていた。招致の際に自国のシカゴは破れたものの、リオとアメリカ東部時間の時差は1時間しかなく、夜に主要な競技が実施されればテレビ視聴が多いプライムタイムになると考えられた。

 さらに、その1時間差すら配慮され、今回は現地時間の夜11時に決勝レースなどが行われたことをご存じの方も多いだろう。

 にもかかわらず、この結果である。その原因は何か。きっかけとなったと考えられているのが開会式の中継だ。米国、リオ両方の夜の時間に開催されたため、事前には生放送になると期待されていたのだが、NBCは東海岸で1時間、西海岸では4時間遅れの録画放送を行ったのである。

 実はNBCはこれまでも北京五輪やロンドン五輪で時差を理由に開会式を生放送しなかったため、その度にスポーツファンから批判されてきた経緯がある。なのに、「今回のリオ五輪なら」という期待を早々に裏切ってしまったのだ。

 しかも、録画放送する理由としてNBCUは「開会式のセレモニーの流れに配慮するため」と事前に発表していた。が、多くの視聴者は、本当の理由はCMをNBCが思い通りに、しかも長時間放送するためという印象を抱いた。放送開始から41分間で、実に計14分がCMに割かれていたからだ。

“五輪離れ”ではなかった

 これに激怒したファンは、これまで以上に多かった。ツイッターをはじめとしたSNSには「つまらない」「こんなにたくさんCMを見せられたのは初めて」といった批判の投稿が集まることとなった。

 さらに4つの金メダルを獲得したシモーネ・バイルズ選手などの活躍で注目度の高かった女子体操団体総合や閉会式なども録画放送され、不満を高めることになった。実際、閉会式の平均視聴率は8.8%で前回の17.0%からほぼ半減している。解説者がバイルズ選手などに対して差別的な発言を連発したことで、NBCの印象が悪くなったことも響いたであろうと思われる。