「HoloLens(ホロレンズ)」をご存知だろうか。米IT(情報技術)大手のMicrosoft(マイクロソフト)社が開発した情報端末である。米プロアメリカンフットボールNFLとの公式スポンサー契約や、世界有数のサッカークラブであるスペインのレアル・マドリードへの技術提供など、スポーツビジネスへの関与を強めている同社による「近未来のスポーツ観戦」に向けた“切り札”だ。
自宅で観戦しているのに、選手がすぐ目の前に現れてプレーする。そんな夢のようなスポーツ観戦の未来像を、Microsoft社はホロレンズで提示した(図:Microsoft社)
自宅で観戦しているのに、選手がすぐ目の前に現れてプレーする。そんな夢のようなスポーツ観戦の未来像を、Microsoft社はホロレンズで提示した(図:Microsoft社)
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ゴーグル型のホロレンズ。実際の風景の中にCGが浮かんているように表示する(図:Microsoft社)
ゴーグル型のホロレンズ。実際の風景の中にCGが浮かんているように表示する(図:Microsoft社)
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 ホロレンズはゴーグル型のデバイスで、かけると実際の風景の中にCG(コンピューターグラフィックス)が浮かんているように表示するのが特徴だ。仮想現実(VR:バーチャルリアリティ)用のヘッドマウントディスプレー(HMD)が目に入る風景を全て映像と置き換えるのに対し、ホロレンズの場合は世界的ブームになっているゲーム「ポケモンGO」のように実景とCGを重ねる拡張現実(AR)に近い。同社はホロレンズについて、ARとVRを融合した「複合現実(MR)」と呼んでいる。

 VR用HMDのほとんどが、ほかにパソコン本体やゲーム機を要するディスプレーであるのに対し、ホロレンズはCPUやメモリーを内蔵し、OSにWindows 10を搭載して独立して動作するコンピューターデバイスであることも特筆すべき点だろう。

天井から床まで画面に

 Microsoft社は2016年2月7日に行われたNFLの「第50回スーパーボウル」の直前に、カリフォルニア州サンフランシスコで現役NFL選手などが出席した「The Future of Football」(フットボールの未来)と題したパネルディスカッションを開催した。その中でホロレンズを使った新しいNFL中継の観戦スタイルを提示するビデオ「Imagining the future for NFL fans」(NFLファンの未来を想像する)を発表した。
ホロレンズの利用イメージ1(図:Microsoft社)
ホロレンズの利用イメージ1(図:Microsoft社)
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 このビデオの中で強調されていた点は大きく4つある。第1にバーチャルな巨大テレビ画面。通常のテレビ画面の枠外の中継画面をホロレンズの投影機能を使ってバーチャルに拡大表示し、例えば天井から床までといった巨大な中継画面を仮想的に創出する、という機能である。

 第2に「ホログラムフィールド」。目の前にあるテーブルの上などにホロレンズを通して3Dの試合フィールドを出現させ、そこで観戦するというもの。ジェスチャー操作によって自在に視点を変化させる機能なども示した。

 第3にリアルタイムデータの表示。選手に装着されたセンサーなどによって、走る速度やタックル時のパワー(加速度)などのデータがリアルタイムに、しかも立体的に表示される。データ表示はサッカーや野球でも盛んになっているだけに、これがファンには一番身近な機能といえるかもしれない。

 第4に実物大のホログラム。これは壁などを突き破って、視聴者の目の前に実物大の選手が現れるように見える立体映像を表示するものである。