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渡辺史敏の「米スポーツ産業ヘッドライン」

NBAの決断、最後の聖域「ユニフォーム」にも広告

2017/08/04 05:00

渡辺 史敏=ジャーナリスト

 あらゆることをマネタイズに使うイメージが強い米国のプロスポーツ。実際、スタジアムそのもののみならず、エリアやゲート、セクションなどの命名権(ネーミングライツ)が販売されるのは、もはや“当たり前”。プロ野球のMLBの7回に行われる「セブンスイニング・ストレッチ」や、ハーフタイムショーといったゲーム内外のエンターテイメントにもスポンサーが付けられている。

 ところが、意外にも、これまで米国の4大プロリーグで広告が掲載されたことがない“聖域”がある。ユニフォームだ。世界的に見ればサッカーを筆頭に、ユニフォームに広告をつけることはむしろ主流とも言える。しかし、米国ではファンがユニフォームを神聖視する傾向が強く、リーグが反発を恐れていたことが大きな要因となっていた。

 実際、ユニフォームではないものの、2004年にMLBが映画「スパイダーマン2」の宣伝で、上部にスパイダーマンの模様を描いたベースを登場させたところ、多くのファンから不評を買ってしまうこともあった。

 その聖域がついに失われることになった。米プロバスケットボールNBAが、2017年10月に始まる2017~2018年シーズンにおいて、ユニフォームおよびジャージへの広告掲載を許可したのだ。4大プロリーグにおいて、公式戦で着用されるユニフォームに広告が掲載される初のケースとなる。

名門セルティックスがGEと契約

 2017年7月中旬時点で、ユニフォーム広告契約の締結を発表しているチームは9つある。クリーブランド・キャバリアーズは同じオハイオ州に拠点を置く米タイヤメーカー、グッドイヤー社と推定年1000万ドルで、オーランド・マジックは同都市にテーマパーク、ディズニー・ワールドを展開する米ディズニー社と契約した。やはり地元に関連する企業と契約することが多いようだ。

ディズニーのロゴが入ったオーランド・マジックのユニフォーム(図:オーランド・マジック)
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 ブルックリン・ネッツはやはり同じニューヨークに拠点を置くソフトウエア企業、米Infor社と契約したが、同社はチームのためにデータ解析サービスも提供する。広告掲載にとどまらず、こうした幅広い提携も広がりそうだ。

ボストン・セルティックスとGE社は2017年1月に複数年の契約を発表。図はプレスリリース(図:ボストン・セルティックス)
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 そうしたなかでも、影響が大きいと捉えられているのが、ボストン・セルティックスである。セルティックスは推定年700万ドルで米ゼネラル・エレクトリック(GE)社と契約した。セルティックスはNBAで最も古いチームの1つであり、人気も高い。そんなNBAの象徴的チームがユニフォーム広告を掲載することで、ファンの反発が小さくなるのではと期待されている。

 ただ、GE社のロゴは本来、青と白で構成されているがユニフォーム広告ではセルティックスのチームカラーである緑と白となっている。この辺りもファンへ配慮が感じられるところだ。

若手コミッショナーが決断

 NBAは今から5年前、調査会社の米SRI社に、ユニフォーム広告の可能性について調査を依頼した。同社は英国のプレミアリーグやインドのクリケット・リーグなどの事例を調べ、ユニフォーム広告はビジネス機会として有望と結論づけた。が、NBAの当時のデイビッド・スターン・コミッショナーやチーム・オーナーたちはユニフォーム広告の導入を見送ってしまう。やはりファンの反発は大きいと判断した。

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