米国で「スポーツのライブストリーミング」が大きなトレンドになっている。以前の記事で、米プロアメリカンフットボールNFLとEC(電子商取引)最大手の米アマゾン・ドット・コム社が2017年シーズンのライブストリーミングで契約したことを紹介した。その後、2017年5月中旬にかけて、米国ではネット企業による主要スポーツのストリーミング契約が次々と発表された。

 これは「アップフロント」と「ニューフロント」の流れに沿ったものだ。アップフロントは米国のテレビ業界の慣行で、5月にテレビネットワーク各社が広告主に対し、秋に始まる新シーズンのプライムタイム編成と広告販売の交渉を行うもの。

 広告主の評価次第では、ネットワーク側が力を入れていた新ドラマの放送がキャンセルされたり、人気番組の打ち切りが決まることもある。時には、番組を放送するネットワークが変わることまである。

 ニューフロントはアップフロントのデジタル版で、動画を中心にデジタルコンテンツの人気の高まりを受け、2008年から業界団体IAB(インタラクティブ・アドバタイジング・ビューロー)主催のイベントとして毎年開催されている。米フェイスブック社のようにイベント自体には参加していなくても、同時期に新しい取り組みについて発表する企業も多い。

ベライゾンがスマホやネットで配信

 今回の一連の発表のなかで注目されるのは、やはりNFLの動きだ。NFLは現地時間4月4日に、アマゾン社と木曜夜に開催される「サーズデーナイトフットボール」10試合のライブストリーミング契約を発表した。

NFLの試合のストリーミング配信サービスを宣伝する米ベライゾン社のホームページ(図:Verizon社)
NFLの試合のストリーミング配信サービスを宣伝する米ベライゾン社のホームページ(図:Verizon社)
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 その後、5月3日には携帯電話会社ベライゾン社とのライブストリーミング契約を発表した。9月24日に英国ロンドンで開催される1試合のみをライブストリーミングするという内容だ。このストリーミングは、自社契約のスマートフォン(スマホ)や傘下のネットサービスであるAOL、Fios TVなどのプラットフォーム向けに配信される。ベライゾン社は携帯電話のNFL公式スポンサーであり、これまでも自社のスマホ向けのライブストリーミング権を有していたが、今回は自社が持つプラットフォーム全体に広げる格好だ。

 アマゾン社の契約と大きく異なるのは、テレビ中継は出場チームの地元地域と英国のスカイTVのみの独占配信という点だ。ほとんどのファンは、ベライゾン社を通してでしか試合を生視聴できないのである。

 NFLはほぼ同じ条件の契約を2015年に米ヤフー社と結び、実施した実績がある。ただ、その時の契約料は1500万ドルだったのに対し、今回は2100万ドルに達した模様だ。

ツイッター、MLBやPGAも

 NFLは5月11日には、ソーシャルメディア大手ツイッター社と、プレゲーム(ゲーム開始前)中継とネット専用のNFL番組の配信で複数年契約を結んだことも発表した。プレゲーム中継ではゲーム前の練習や見どころ、舞台裏がツイッターと傘下の動画配信サービス、ペリスコープで生配信されるという。さらにNFL傘下の専門チャンネル、NFLネットワークの出演者による30分の生番組を週5日配信するとのことだ。