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渡辺史敏の「米スポーツ産業ヘッドライン」

売上130億ドルへ 世界一のNFL、驚きの収益力

2016/05/31 00:00

渡辺史敏 = ジャーナリスト

 日本市場の約5兆円に対して、その10倍の規模の約50兆円。スポーツ産業における日米格差は、GDP(国民総生産)比をはるかに上回る。なぜ、米国のスポーツ産業はここまで巨大なのか、その差はどこにあるのか――。米国に20年近く滞在し、NFLやMLBなど米メジャースポーツの取材経験が豊富なジャーナリスト・渡辺史敏氏に、ビジネスや最新テクノロジーの導入といった独自の切り口から米メジャースポーツの最新事情を報告してもらう。

 現在、米国、さらには世界において最も成功しているプロスポーツリーグが、プロアメリカンフットボールのNFL(National Football League)だ。

 その人気の高さがよく分かるのが、米国の調査会社ハリス・ポール社が米国の成人を対象に行っている”最も好きなスポーツ”を問う調査だ。2016年1月に発表された2015年の調査結果でNFLは33%を獲得し、1位となっている。

 「National Pastime(国民の娯楽)」などと呼ばれる大リーグMLB(Major League Baseball)を含む野球は2位だが、15%でNFLの半分以下だ。NBA(National Basketball Association)を意味する男子プロバスケットボールと、NHL(National Hockey League)を含むアイスホッケーはともに5%にとどまる。いかにNFL人気が高いかが分かる。

 さらに興味深いのは、この調査が始まった1985年との対比だ。実はプロフットボールは、この初回からずっと首位を保っている。ただし1985年はプロフットボールは24%で1位だったものの、2位の野球は23%でその差はわずか1%だった。その後NFLは人気が拡大し、2004年に初めて30%を突破、1985年と2015年の差は+9ポイントとなっている。対して、MLBは8ポイントも下げてしまった。

2016年2月に開催された2015年シーズンの優勝決定戦「第50回スーパーボウル」。デンバー・ブロンコスとカロライナ・パンサーズの試合の様子((C)NFL JAPAN. All Rights Reserved.PHOTO BY AP Image)
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売り上げ目標は2027年までに250億米ドル

 NFLの人気の高さは、当然ビジネス面での成長につながっている。米経済誌『Forbes(フォーブス)』などによると、NFLの2016年の総売り上げは133億米ドル(約1兆4360億円)に達すると見られている。これは2位と推定されているMLBの95億米ドル(約1兆260億円)、3位のサッカーの英国プレミアリーグの33億ポンド(約5181億円)をはるかにしのぐ。NFLコミッショナーのロジャー・グッデル氏は、2027年までに年間で250億米ドル(約2兆7000億円)を目指すと公言しており、鼻息は荒い。

NFLのロゴ
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 さらに、所属チームの総資産価値でもNFLは図抜けた存在となっている。2015年9月にフォーブスが発表した世界のチーム総資産価値ランキングにおいて1位となったのは、40億米ドル(約4320億円)と判定されたNFLのダラス・カウボーイズだった。トップ10にNFLの6チームがランクインした。

 それだけではない。NFLにおいて最も資産価値が低いと判定されたバッファロー・ビルズでさえ、14億米ドル(約1512億円)とされている。これはプレミアリーグの強豪マンチェスター・シティの13億7500万米ドル(約1485億円)を上回る。つまりNFLに所属する32チームのすべてが高い資産価値を有しており、もちろん赤字のチームはない。

 この点は、32億米ドル(約3456億円)でランキング3位に入ったニューヨーク・ヤンキースなどが所属するものの収益低迷に悩むチームも多いMLBや、2位のレアル・マドリード(32億6000万米ドル、約3521億円)などビッグクラブが偏在する欧州サッカーなどとは大きく異なる点である。リーグ全体、そして全所属チームが繁栄しているのがNFLなのだ。

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