2017年11月、ニューヨーク・マンハッタンのど真ん中、タイムズスクエアに屋内型のテーマパーク「NFLエキスペリエンス・タイムズスクエア」がオープンする。場所もさることながら、注目すべきなのは、米国で圧倒的な人気を誇るプロアメリカンフットボールのNFLと、日本でも人気の世界的なサーカス集団、シルク・ドゥ・ソレイユがコラボして開発・運営することだ。両者は2016年6月に提携を発表し、共同で準備を進めてきた。既に入場チケットの販売を開始している。

11月にニューヨークのタイムズスクエアにオープンする施設「NFLエキスペリエンス・タイムズスクエア」のホームページ。既にチケットを販売開始している(図:NFL)
11月にニューヨークのタイムズスクエアにオープンする施設「NFLエキスペリエンス・タイムズスクエア」のホームページ。既にチケットを販売開始している(図:NFL)
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 NFLとしては、シルク・ドゥ・ソレイユが持つエンターテインメント事業運営のノウハウが、シルクにとっては強力なNFLのコンテンツ力が魅力だったであろうことは想像に難くない。まさに「スポーツ×エンターテインメント」のWin-Winモデルだ。

初回は1992年に開催

 NFLエキスペリエンス自体は、1992年の第26回スーパーボウルで初開催されている。開催都市であるミネソタ州ミネアポリスの国際展示場を利用し、スーパーボウル当日までの約1週間、期間限定の形で開催された。

 実は筆者はここに参加したのだが、会場にはNFL選手が使っているボールでパスを投げたり、逆にパスを受けたり、脚の速さの測定に使われる40ヤード走を行ったり、とNFL選手と同じような体験が出来るアトラクションが設けられていた。さらにスタジアムのロッカールームが再現された展示コーナーや名プレーのテレビ実況・解説を体験して、テープに録画してくれるコーナーなどもあり、どれも大人気だった。

 現在、スーパーボウルのチケットは2次流通で最低30万円を超えるほどの“高根の花”であり、当時から一般のファンが簡単に手に入れられるものではなかった。そんなファンにもNFLのすごさを実感してもらい、スーパーボウル開催を盛り上げようというのが開催の狙いだったのである。

MLBにも波及

 その狙いは見事に的中した。NFLエキスペリエンスは大変なにぎわいを見せ、以後スーパーボウルでは恒例のイベントとしてほぼ毎回開催されるようになった。現在ではVR(仮想現実)の体験アトラクションなども増え、優勝トロフィーとの記念撮影には長蛇の列ができるのが恒例となっている。さらに、入場が有料のNFLエキスペリエンスの周囲地区を交通封鎖して、コンサートなど無料の大型イベントを開催する、といった取り組みも定着している。

 NFLはこの成功を受け、スーパーボウル以外にドラフトや各チームの試合でも同様のイベントを開催するようになった。NFLとアメリカンフットボールの普及のため、アトラクションの一部は日本にも輸入され、国内ゲームなどで実施されていたりもする。試合などに合わせてファンとの新たなエンゲージメントを高め、開催都市を盛り上げるイベントは他のスポーツにも波及しており、米MLBはオールスターゲームの開催地で同種の期間限定テーマパーク「ファンフェスト」を開いていたりする。

未体験のファンに試合のすごさを

 さて、NFLエキスペリエンス・タイムズスクエアの特徴だが、まずNFLの試合やイベントとは直接関係ない場所での、常設スタイルでの開催という点が挙げられる。

 タイムズスクエアは、劇場やホテルなどが立ち並ぶ米国でも有数の観光スポットではあるが、スタジアムは近くにはない。ニューヨークを拠点とする2チーム、ニューヨーク・ジャイアンツとニューヨーク・ジェッツの本拠地であるメットライフスタジアムは、マンハッタンから10km以上離れたニュージャージー州イーストラザフォードに立地している。つまり、もともとNFLを意識して訪れるファンというより、ニューヨークにやってきた観光客にNFLをより身近に感じてもらい、その魅力を伝えるという目的が見える。