ウエアラブル機器やモバイル端末を使って、選手のプレーや活動量を測定し、パフォーマンスや生活、睡眠などを改善する取り組みが、プロだけでなく一般にも普及してきた。こうしたテクノロジーを導入する動きはメンタル面の強化にまで及びつつある。

 2018年3月20日、リーグを挙げて導入を発表したのが北米プロバスケットボールのNBAだ。英国ロンドンに本社を置きメンタルトレーニングを専門とするヘッドスペースと提携し、NBAはもちろん傘下の教育リーグであるGリーグ、女子のWNBA、eスポーツのNBA 2Kリーグの選手、さらには全従業員が同社のアプリを使用できるようにしたのである。

メンタルトレーニングに関してNBAと提携したことを報告する、英ヘッドスペースへのインスタグラムへの投稿(図:ヘッドスペースのインスタグラムへの投稿より)
メンタルトレーニングに関してNBAと提携したことを報告する、英ヘッドスペースへのインスタグラムへの投稿(図:ヘッドスペースのインスタグラムへの投稿より)
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 ヘッドスペースが開発したスポーツ向けパッケージを含む、全ての瞑想(めいそう)コンテンツにアクセスできる。モチベーションや集中力を高めたり、トレーニングの効率向上、早期回復などの効果が期待されている。最近、日本でもしばしば語られる「ゾーンに入る」ためのマインドフルネス瞑想もその一環となっている。

メンタルトレーニングのコンテンツ共同開発

 2018年夏には、選手が競技に備えてメンタルトレーニングをするためのコンテンツをNBAとヘッドスペースで共同開発し、モバイルアプリとして配信するということだ。

 この案件を報じた米ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、今回の提携は数カ月前に試合でシュートを外したNBA選手がヘッドスペースに助けを請うたことが発端だという。その後、シーズン開幕2日前にロサンゼルスの米国支社がロサンゼルス・レイカーズに対して瞑想のセッションを開催、そこからリーグとの提携に発展したということである。

 NBAコミッショナーのアダム・シルバー氏は声明で「スポーツのトレーニングは身体的コンディショニングばかりに集中することが多いが、全てのレベルでトップアスリートであろうとするならメンタルフィットネスは成功の決定的要因だ」とメンタルトレーニングの重要性を語っている。またヘッドスペースのリッチ・ピアーソンCEOは「選手から差異化要因はフィジカル(身体性)ではなく、メンタルのタフさと集中力だという話を何度も聞いた」とも話した。

 ウォール・ストリート・ジャーナルによると、今回の提携に関しては金銭は発生しておらず、ヘッドスペースはコンテンツを無料提供する代わりに4200万回以上ダウンロードされているNBAアプリでの露出を通じてマーケティングを展開するとした。

脳部屋でスポーツを次のレベルへ

 こうしたリーグの動きに対し、さらに独自のメンタルトレーニングを導入したのがNBAのポートランド・トレイルブレイザーズだ。チーム施設にブレインルーム、つまり「脳部屋」を設置したのである。

 この施設は脳機能の向上、改善を専門とする米ニューロコア・プロとの提携によって設けられた。内部には液晶モニターと脳の動きを測定するセンサーのついたヘッドバンドと米ビーツのヘッドフォンなどが複数台置かれている。練習や試合後、選手たちはこの部屋に来て30分のセッションを受けるのだ。