米国時間2017年4月4日、米プロアメリカンフットボールNFLとネット大手の米アマゾン・ドット・コム社は、9月に開幕する2017年シーズンのライブストリーミングで契約した、と発表した。

Amazon.comのホームページ。トップでアマゾン・プライムでの動画視聴サービスを宣伝している(図:Amazon.com)
Amazon.comのホームページ。トップでアマゾン・プライムでの動画視聴サービスを宣伝している(図:Amazon.com)
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 現地の木曜夜に開催される「サーズデーナイトフットボール」(TNF)から10試合で実施される予定だ。契約料は5000万ドルと推測されているが、この契約からはNFLとアマゾン、双方の思惑と課題が垣間見える。

 まずNFLだが、これまでは大手ネット企業と組むことによる、特に米国市場向けの大々的なサービス実施には消極的な姿勢を見せてきた。年総額50億ドルもの放映権料を支払う契約テレビ局に配慮していたためと見られている。

 従来、提供していたゲーム中継のストリーミングは、以下のように限定的なものだった。北米以外の海外向け有料サービス「Game Pass」や、衛星放送のディレクTVによる本来の放送地域外向けゲーム中継が視聴できる有料パッケージ、サンデー・チケットの契約者向けサービス、日曜夜開催の「サンデーナイトフットボール」を放送するNBCによる自局サイトでの実施などである。

2015年に方針転換

 それがOTT(Over The Top)と呼ばれるストリーミング配信サービスの普及を背景に方針転換したのが2015年だった。

NFLの試合の模様1(写真:NFL)
NFLの試合の模様1(写真:NFL)
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 米ヤフー社と1ゲームをライブでストリーミングすることで契約、実施されたのだ。ヤフー社との契約の特徴は、このゲーム中継が出場チームの地元以外では米国を含め、全世界的に一切テレビ中継されない独占契約だった点にある。この契約でヤフー社は1700万ドルをNFLに支払った模様だ。

 ただ、この試合は英国ロンドンでの開催で、米国東部時間の日曜朝9時30分開始という元々視聴率が望めないゲームだった。テレビ中継をなくしても影響が少ないという背景があったのだ。結果、米国内では164万人がこのストリーミングを視聴したという。

 その後、2016年にライブストリーミングの権利を獲得したのは米ツイッター社だった。契約内容は今回と同じ、TNF10試合での実施で、契約料は1試合のみだったヤフー社よりも安い1000万ドルと見られている。

 これは独占契約ではなく、同じ10試合を地上波のNBCもしくはCBSが、さらにケーブルチャンネルであるNFL専門局のNFLネットワークもテレビ中継を行ったことが大きな要因となったようだ。

 またNFLの公式携帯電話スポンサーの米ベライゾン社は自社端末向けのストリーミング権を持っていたし、CBSも契約者向けのストリーミング権を得ていた。つまり、他に視聴手段が多数あるなかでの契約だったのである。

 それでもツイッター社のストリーミングは平均350万人の視聴者を獲得、そのうち55%は25歳以下だったという。同社はこの契約を契機にライブストリーミング事業に力を入れており、2017年第1四半期にはニュースや政治番組などを含めると400以上のイベントをライブストリーミングしている。