米プロアメリカンフットボールのNFL機構は、アリゾナ州フェニックスで競技ルールやリーグ運営の内規の改定、チームの移転申請に対する可否などを決める年次会議を2017年3月26日から29日まで開催した。

“時短”が検討されているNFLの試合の様子(写真:NFL)
“時短”が検討されているNFLの試合の様子(写真:NFL)
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 チーム・オーナーによる投票で、レイダースが現在のカリフォルニア州オークランドからネバダ州ラスベガスへの移転することが認可された。その会議を直前に控えた3月22日、ロジャー・グッデルNFLコミッショナーが「試合時間短縮のための施策」をファンへのメールという形で発表し、大きな注目を集めている。

 NFLはこれまで順調に成長を続け、2016年の総売り上げは133億米ドル(約1兆4800億円)に達したと見られている。しかし、以前紹介したように2016年9月に開幕した2016年シーズンはテレビ視聴率が当初前年割れする事態に陥った。

 ただし、米大統領選が終了すると視聴率は回復したため、低迷の原因は大統領選に人々の関心が寄せられたからと結論づけられている。また一部の選手が人種問題への抗議から試合前の国歌斉唱時に起立しなかったことで、イメージが一時的に下がったことも原因の1つになったという調査結果が出たりもした。

3時間超の試合で正味のプレー時間は「11分」

 そんな視聴率低迷の原因究明の議論の中で多く出されたのが、「試合時間が長すぎる」という意見だった。

 2016年シーズンの平均試合時間は3時間12分だった。これは2014年より5分長くなっている。ネット、そしてスマートフォン(スマホ)の普及で短時間の動画を大量に視聴するのが当たり前の時代に、試合全体を通じて視聴者をつなぎ止めるには長すぎる印象は拭えない。

 しかもこの3時間超の試合時間、つまりテレビ中継時間において、実際に生でプレーする様子が映されている時間は「11分間程度」に過ぎないという調査結果もある。残り時間のほとんどはプレー間に選手が立っている様子やリプレー、そしてCMに費やされているのである。これではファンがフラストレーションをためるのも仕方がないだろう。そうした背景があって、今回のコミッショナーによる表明に至ったようだ。

 表明の中でまず挙げられていたのがレフリーによるビデオ判定の手段変更である。NFLではチームのヘッドコーチが1試合最大3回ビデオ判定を要求できるほか、得点時などにも審判の判断でビデオ判定が導入されている。

 これまでは判定の度にレフリーがサイドラインに設置されたモニターに赴いてチェックすることがルールで定められていた。それをフィールド上でレフリーがポータブル端末を持ち、そこに表示されたビデオを見て判定できるようにするというものである。広いフィールドをモニターまで歩く時間などを減らし、判定を迅速化して試合時間の削減を図ろうというのだ。

 この案はチーム・オーナーの投票で可決されている。今シーズンから採用される模様だ。NFLでは公式スポンサー契約によって米マイクロソフト社のタブレット端末「Surface(サーフェス)」が採用されている。タブレット端末、つまりSurfaceを使い、フィールド上でビデオ判定が行われる様子が映ることになると、同社にとっては新たなPR機会になるかもしれない。