世界が驚く日本の微細加工技術
~IoT・AI・超ハイテク産業を支えるニッポン中小企業の全貌~
目次
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工具を内製し、微細ピン切削時のバリを抑制する
日本の微細加工サプライヤー(2)愛工舎[第39回]
主工場を岐阜県・七宗町に置く愛工舎が製造しているのは、半導体や電子部品、電子部品から構成される複雑な回路の通電検査を行うための検査治具、コンタクトプローブに用いられる微細な金属ピンです。こうした微細なピンになると、加工時に発生するバリの影響を受けやすくなりますが、同社では、超硬合金のろう付けバイトを…
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微細穴を有する製品、基準を貫通穴にしておく理由は?
日本の微細加工サプライヤー(1)中川製作所[第38回]
金属材料、セラミック、樹脂材料に対して直径0.02mmクラスの微細穴、あるいは交差穴あけ加工を得意とするのが、三重県津市に本社工場を置く中川製作所です。23℃±0.5℃に温度管理がなされた恒温室を持ち、スピンドルなど主要部位の温度管理が徹底された微細加工専用のマシニングセンターを複数台保有しています…
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日本に部品加工業を残せ!
船井総合研究所 ファクトリービジネス研究会の取り組み[第37回]
日本の製造業の競争力の源泉ともいえる部品加工業には、いわゆる業界団体などといった全国レベルでの横のつながりはほとんどなく、地域ごとのネットワークしか存在しませんでした。船井総合研究所 ファクトリービジネスグループは、部品加工業の経営体質を強化するために、2011年11月から「ファクトリービジネス研究…
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「担当部門に騙されていた」とつぶやく大手メーカー技術者
微細切削加工研究所の取り組み[第36回]
「日経ものづくり大賞」の受賞や、世界最小のサイコロを製造したことでメディアでも頻繁に取り上げられるようになった入曽精密には、数多くの大企業からも企業視察が相次ぐようになりました。ある某大手電機メーカーの設計者は視察時に「我々は資材部門に騙されていた」とつぶやきました。その某大手電機メーカーでは資材部…
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肉眼で見えない工具とワーク、専用システムで扱う
初公開!世界最小のサイコロ製造プロセス(2)[第35回]
マシニングセンターで加工を行う際には、工具補正をかけるために工具長測定を機上で行います。ところが世界最小の0.1mm角のサイコロを製造するためには、⌀0.02mmという、肉眼では見えないレベルの極めて小径のエンドミルを使う必要があります。こうした微細な切削工具は、通常の工具長測定装置では折れて破損し…
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0.1mmのサイコロに必要なボールエンドミルの直径は?
初公開!世界最小のサイコロ製造プロセス(1)[第34回]
最も大きな制約条件となるのが加工に使用する刃物(切削工具:ボールエンドミル)のサイズです。前述の通り、0.3mm角のサイコロを初めて製造した2004年の段階で、最も径の小さいボールエンドミルは⌀0.06mmでした。また同時に、工具を装着する工作機械(マシニングセンター)の精度が伴っていなければ、やは…
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1から6まで目の出る確率は均等なのか?
世界最小のサイコロ誕生秘話[第33回]
高精度加工で造られたサイコロはチタン削り出しということもあり、発表した次の週にはインターネット上で大きな反響を呼び、高額(1セット約2万円)であるにもかかわらず数十セットも一度に注文が入るというほどでした。しかし、そのとき「高精度加工技術で造られたサイコロは、目の出る確率は均等なのか?」という問い合…
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金属削り出しで造るバラの花とサイコロ
不可能を可能にする町工場[第32回]
データベース化とコンピュータによる汎用的、標準的な業務の進行。そこに例外的な変化は生まれません。例外的なものにこそ、特殊な技術、製品の進化、「製品革新」が潜んでいると、入曽精密の斎藤社長は考えています。では、例外的なすごい技術があるのか、中小企業はさまざまな手段を活用して発信していくべきではないか?…
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チャンスさえあれば最新設備を導入
大手企業をサポートする中小企業[第31回]
大手企業から失われた加工技術を補っているのが、中小部品加工業の存在です。彼らは「技術的に不可能」とされる加工課題も、その熱意と志で実現してきているのです。グローバル展開する大手企業を、極めて意識の高い中小企業がサポートする、というスタイルは日本独自のものです。
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デジタル化と海外移転で蝕まれた加工ノウハウ
なぜ大手企業から加工技術が失われたのか?[第30回]
筆者は中小製造業の経営コンサルタントとして、ほぼ毎日全国の顧問先を回っています。その中で良く聞くのが、「仕事を出す側の大手企業が、加工のことを知らなくなった」「以前と比べると技術レベルが、ずいぶん低くなった」という言葉です。現実に、大手企業の設計者が描く図面では加工ができるようなものになっておらず、…
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見えない部品の表面に金属膜を析出
微細加工部品へのめっき技術[第29回]
肉眼で見ることが困難なほど微細な部品には、通常のめっきの方法は適用できません。バレルめっきでは部品同士がくっついてしまい、正確なめっきを施すのが困難です。静止めっきにおいても、微細な部品1つひとつを固定するのは大変な手間とコストがかかります。そこで微細な部品に対しては、「網付めっき法」とよばれる方法…
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器具が入らない場所・見えない場所を測る
微細加工に不可欠な高精度の測定技術[第28回]
いかに微細な部品が、あるいは高精度な部品が加工できたとしても、その加工結果を測れなければ意味がありません。微細かつ複雑な形状の部品の場合、例えば3次元測定機のプローブが入らない、あるいはノギスやマイクロメータも使用できない、といった問題が発生します。こうした場合に活躍するのが非接触の3次元測定機です…
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さまざまな種類の金属を精密な形状に固める
金属射出成形(MIM)による微細加工の実際[第27回]
MIMは材料となる金属粉末に、バインダーと呼ばれる樹脂粉末を混ぜ、加熱してバインダーを溶融させた状態の材料を、射出成形機で金型に入れて形状(ワーク)を造ります。このワークを真空炉に入れ、脱脂という工程でバインダーを除去すると同時に、焼結という工程で金属を固めます。板厚0.2mm以下の薄肉形状の形成が…
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0.3mmの薄壁を持つ医療器具を大量生産
樹脂射出成形による微細加工の実際[第26回]
成形技術の中でも特に一般的なのが樹脂射出成形です。ここで微細加工技術が求められる分野の1つが医療分野です。特に近年、医療分野においてはさまざまな機器においてディスポーザブルタイプ(使い捨てタイプ)の利用が進んでおり、金属と比較して手軽かつ安価に量産できる樹脂材料が多用されています。
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極細のパンチで材料を打ち抜く
プレス加工における微細加工技術[第25回]
スマートフォンのコネクタなど、微細な3次元形状の製品をプレス加工(=冷間鍛造)により製造する、といったニーズが急速に増えています。従来こうした製品は、焼結金属やMIM(金属射出成形)のワークに対して切削加工を行うなどして製造していました。こうした加工方法をプレス加工(=冷間鍛造)に置き換えることがで…
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セラミックスへの微細加工を可能に
適用対象が広がる放電加工技術[第24回]
放電加工の弱点は、通電性のあるワークでなければ加工できないことです。その理由として、放電加工は電極(銅またはグラファイト)とワークの間にアークと呼ばれる放電現象を発生させ、その際の物理的な力によりワークを除去していく加工であることが挙げられます。ところが現在、放電加工によるセラミックスへの加工が可能…
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超短パルスレーザーが可能にする微細加工の新境地
熱的影響を抑える最新のレーザー加工[第23回]
微細加工領域のレーザー加工技術として、近年注目を集めているのが超短パルスレーザーであり、一般にピコ秒レーザーとフェムト秒レーザーがあります。通常のレーザー加工のパルス幅がナノ(10のマイナス9乗)秒なのに対して、超短パルスレーザーはパルス幅がピコ(10のマイナス12乗)秒あるいはフェムト(10のマイ…
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ファイバーレーザーへの進化で高反射材も切断可能に
微細加工分野で適用されるレーザー加工[第22回]
2000年頃までのシートメタル系(板金系)の受託型製造業の工場にあるレーザー加工機といえば、大半がCO2レーザーでした。CO2レーザーは高出力が安定的に得られる半面、材料への熱影響が大きいという短所がありました。高出力で高い集光性を得られる固体レーザーであるファイバーレーザーの開発が進み、kWクラス…
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深さが直径の100倍、硬い材料に穴を開ける
非接触加工法における微細加工技術[第21回]
穴加工においては、その難易度をL/D(アスペクト比)で示します。すなわち穴径(=D)に対して、どれだけ長い(=L)穴なのかという指標です。これが10を超えると深穴加工と呼ばれ、30を超えると通常のドリルでは加工が困難になります。ところが放電加工を活用すれば、こうした微細穴加工においてもアスペクト比1…
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マシニングセンターでセラミックス・ガラスを切削加工
超音波を援用した微細加工技術[第20回]
セラミックスやガラスといった脆性材料は、その名の通り脆い(もろい)ため、マシニングセンターと通常の切削工具で加工することが非常に困難です。その結果、金属材料や樹脂材料のような自由度の高い加工ができず、それが使用上の難点でした。そうした中、切削工具の刃先を超音波領域で切削方向に高速振動させる超音波援用…