不可能といわれたセラミックスへの放電加工が可能に!

 前回は、極短パルスレーザーという加工技術を活用することにより、従来の微細加工用レーザーでは困難、あるいは不可能といわれた加工が可能となる事例を紹介しました。

 レーザー加工と並び、非接触の「高出力」加工として本連載第21回でも紹介した放電加工があります。そこでも説明しましたが、放電加工の弱点は、通電性のあるワークでなければ加工できないことです。その理由として、放電加工は電極(銅またはグラファイト)とワークの間にアークと呼ばれる放電現象を発生させ、その際の物理的な力によりワークを除去していく加工であることが挙げられます。

 ところが現在、放電加工によるセラミックスへの加工が可能となっています。広島市に本社・工場のある橋川製作所(従業員6人)は長年の研究の結果、放電加工液中にアルミ粉末を混ぜることにより、アークに至る直前の「過渡(かと)アーク」と呼ばれる領域の現象を活用することで、基本構造が絶縁体であるセラミックスへの加工技術を開発しました。この技術によって、従来は放電加工が不可能であった炭化ケイ素(SiC)、ジルコニア、アルミナといった導電性セラミックスに対する微細加工が可能になりました。

 絶縁性焼結体であっても加工そのものは可能ですが、材料の特性上、品質・精度の制御が困難です。それに対して導電性セラミックスの場合は、ワークと対峙した電極との微小間隙でも放電現象のコントロールが可能なことから、品質精度が数倍も高く、面粗度0.4μmRa、寸法精度±0.005mmの精度が得られます。

 図1に、放電加工によるセラミックスへの加工事例を示します。

図1 セラミックスへの放電加工の事例
図1 セラミックスへの放電加工の事例
写真:橋川製作所