パルス幅千兆分の1秒(!)を実現するフェムト秒レーザー

 微細加工領域のレーザー加工技術として、近年注目を集めているのが超短パルスレーザーであり、一般にピコ秒レーザーとフェムト秒レーザーがあります。

 レーザー加工においてワークへの熱的影響を抑える際、レーザーの発振モードにはパルス発振を使います。通常のレーザー加工のパルス幅がナノ(10-9)秒なのに対して、超短パルスレーザーはパルス幅がピコ(10-12)秒あるいはフェムト(10-15)秒という短時間のレーザー発振となります。ちなみに、フェムト秒は千兆分の1秒(!)という考えられないほどの短い時間であり、そのすごさが分かります。

 超短パルスレーザーの特徴は次の通りです。

<超短パルスレーザーの特徴>

・一般のレーザーはレーザー照射部に熱影響を受けるが、超短パルスレーザーは熱伝導が始まる前にレーザー照射が止まるため、非熱的加工が可能である。

・従って照射部分以外に影響が広がらず、一般のレーザーよりも微細加工に適している。

・一般のレーザーは反射率の高い材料(光を吸収しにくい材料)は加工困難であるが、超短パルスレーザーでは加工が容易である。

・例えばガラス、セラミックスといった一般のレーザーでは加工困難な材料に適用できる。

微細加工の幅を広げる超短パルスレーザー

 図1に、超短パルスレーザーとナノ秒レーザーでの加工比較写真を示します。超短パルスレーザーの方はワーク表面のエッジが立っており、ナノ秒レーザーの方にあるワーク表面の溶解がほとんど見られません。熱的影響が極めて抑えられていることがよく分かります。

図1 超短パルスレーザーとナノ秒レーザーでの加工比較
図1 超短パルスレーザーとナノ秒レーザーでの加工比較
写真:東成エレクトロビーム
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