ドイツ人も驚いた⌀0.01のエンドミル

 本連載の第5回でも紹介した日進工具は、小径ドリル・エンドミルの専門メーカーとして代表的な存在であるといえます。同社は、工具刃先径の業界平均10mmに対して6mm以下の工具のことを「小径」と呼び、0.5mm以下の工具のことを「微細」と呼んでいます。

 そうした同社は、世界で初めて⌀0.01mmのエンドミルを標準化することに成功しました。

髪の毛(約0.1mm)より細いエンドミル
髪の毛(約0.1mm)より細いエンドミル
⌀0.01mmのエンドミル
⌀0.01mmのエンドミル
⌀0.01mmのドリル
⌀0.01mmのドリル   
図1 日進工具の微細エンドミル
写真:日進工具

 ⌀0.01mmのエンドミルともなると造るのも大変ですが、使いこなすのも同じくらいに大変です。同社によると、このエンドミルを使いこなしているのは日本国内でも数社しかなく、ものづくり大国ドイツですら使いこなせる会社は今のところないそうです。

 実際、ドイツで開催されたEMOショー(工作機械・工具の世界3大見本市の1つ)に出展したところ、「⌀0.01mmのエンドミル」の掲示を見た多くのエンジニアから「単位をひと桁間違えているぞ!」と指摘されたそうです。顕微鏡で実際に⌀0.01mmのエンドミルを見せたところ、皆腰を抜かして驚いた、という逸話があるくらいです。

 ちなみに第6回で紹介した入曽精密は2004年当時、日進工具が発表した⌀0.06mmのエンドミルを使い、「300μm角のサイコロ」(当時世界最小)を金属で削り出すことができました。そして、さらに径の小さなエンドミルが標準化された結果、第6回で紹介した「100μm角のサイコロ」を削り出すことができ、世界最小サイズを自ら更新するに至ったわけです。

 微細加工を行う上で、いかに工具が重要であるかがよく分かります。