ナノ加工・微細加工の定義とは?
加工技術におけるナノテクノロジーと微細加工技術の違いとは何でしょうか?
以降、谷口博士が提唱された狭義のナノテクノロジーを、本連載では「ナノ加工」と表記します。さらにナノ加工と微細加工について、本連載では次のように定義したいと思います。
ナノ加工 | 微細加工 | |
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加工精度・形状における定義 | 加工精度nm(ナノ)台の加工技術 | [1]加工精度1/1000mm(1μm)~およそ1/100mm(10μm)までの加工技術 [2]肉眼では見えない寸法(およそ0.3mm未満)における加工技術 |
谷口博士の到達限界予測によるところの定義 | 超精密加工 | 高精密加工 |
またナノテクノロジーと微細加工技術を、製造業の3Mの視点で比較すると次のように示すことができます。
3Mの視点 | ナノ加工 | 微細加工 |
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Man 実際の使用者 | ・大手半導体メーカーや大手光学メーカーの製造部門 ・大手企業の研究・開発部門 ・国際的学術機関・大学などの研究室 | ・主に小規模・中小企業の受託型部品加工業 |
Machine 設備 | ・半導体製造装置 ・恒温室で使用する極めて高額な工作機械 | ・市販の工作機械、市販の各種加工設備 |
Material 材料(形状) | ・半導体製造プロセス(エッチングなど)における主に2次元形状 ・レンズやレンズ金型、ミラーなど極めて高い表面粗さの実現 | ・あらゆる3次元形状 |
ナノ加工と微細加工は精度の面ではもちろんのこと、製造業の3Mの視点でみても極めて大きな違いがあることが分かります。
加工技術の世界では得てして「これからはナノ加工だ!」と語られることが多いように見受けられますが、実際にはナノ加工はその用途・形状の面で極めて限定された加工法と捉える方が理にかなっています。もちろん半導体製造プロセスにおいてナノ加工は必要不可欠であり、また半導体製造プロセスそのものの市場規模は極めて大きいものではありますが、実務的に一般加工技術とは切り離して考えるべきでしょう。
それよりも今、注目すべきは微細加工です。