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 日経ものづくり2017年12月号の特集「品質クライシス」で、神戸製鋼所や日産自動車、SUBARUの偽装や不正が取り上げられている。この記事を読み、私は3社ともルールがおろそかになっていたのではないかとの思いに至った。今回は、ルールについて述べたい。

 それぞれの企業は、工夫した開発設計プロセス(以下、設計プロセス)を持っている。設計プロセスは多くのステップから構成される(関連記事)。各企業のプロセスも工夫された多くのステップから成るであろう。

 仕事柄、企業の設計担当者からしばしば次のような相談を受ける。「忙しくて、設計プロセスの全てのステップをこなすことができない。何か良い方法はないか」と。こう聞いてくる人は「忙しければ、ステップを飛ばすしかないですね」という回答を期待しているような気がする。しかし、私の答えは決まっている。「設計プロセスは職場のルールです。ルールなのだから、やるしかない」。

 私も設計業務に長らく携わっていたので、質問する人の気持ちはよく分かる。しかしだからと言って、ルールを逸脱して良いとはならない。「ルールは守るからルール」なのである。当たり前のことだが、これが大切だ。1つでも例外を認めると、「蟻の穴より堤も崩れる」と同様に、「ルールは有って無きが如(ごと)し」となる。「前回はこのステップをパスしたでしょう。今も忙しい。なぜ今回はパスが認められないのか」となり、次第に、その職場のルールはなくなってしまう。なし崩しになっていく。

 設計プロセスは、骨格となる第1グループ、設計の質を高める第2グループ、検討抜けを防ぐ第3グループから成っている。このうち、第3グループは、議論の場であるデザンレビュー(DR)や、決裁の場である品質保証会議で構成されている。実は、私も忙しい時にパスしたかったのは、このDRや品質保証会議だった。だが、これらをパスすることはルールの逸脱だ。そんなことが許されることはなかった。