対象製品をよく知るとは

 [3]の対象製品をよく知ることというのは、DRBFMに取り上げる製品についてメンバー全員がよく理解しておくということだ。「よく理解する」とは具体的に次のようなことである。

(1)対象製品の製品仕様、つまり「設計目標値の把握」
(2)対象製品が市場で使われた場合の「使用環境の把握」
(3)変化点の抜けのない把握
(4)対象の類似製品が過去に起こした品質不具合や、他製品の品質不具合の把握

 こうした知見なくしてDRBFMの議論は深まらない。

 ここで、(1)の設計目標値の把握の重要性について述べよう。品質不具合というと、部品が劣化したり壊れたりすることなどを思い浮かべる。なぜこれらがいけないかというと、その結果として設計目標値を満足しなくなるからだ。例えば、ねじが1本緩むだけで、設計目標値を満足しなくなり、お客様に迷惑をかけることになる。だからこそ、メンバー全員が設計目標値を抜けなく把握しておくことが求められるのだ。対象となる設計目標値は、機能や性能、信頼性、体格、重さ、コストなど全てに対するものである。加えて、設計目標値は定量的に把握しなければならない。

 続いて、(2)の使用環境の把握に進む。製品の劣化という品質不具合は、その製品にかかるストレスが原因で発生する。ストレスには市場ストレスと工程のストレス、自己のストレスの3つがあることを既に本コラムで述べた。中でも重要なものは、市場ストレスである。市場ストレスは温度や振動、湿度、紫外線、粉じん、電気ノイズなど多岐に渡る。それでも、全てを定量的に把握しなければならない。逆に、市場ストレスを知らなければ、劣化という品質不具合について議論するスタートが切れない。それほど重要な事前準備なのである。

 (3)の変化点の抜けのない把握については、本コラムで既に「対象の類似製品が過去に起こした品質不具合や、他製品の品質不具合などを知ること」という内容を紹介している。だが、重要なことなので次回以降のコラムで再度取り上げよう。

 今回はDRBFMのフロントローディングについて述べた。前回のコラムで述べた通り、仕事は事前準備、すなわちフロントローディングが大切だ。DRBFMも例外ではない。DRBFMに取り組む際に、実施メンバーと実施時期、そして対象製品をよく知ることという準備がしっかりできているかどうか、一度振り返ることが大切だ。