ワールドテック 代表取締役、元デンソー設計開発者 寺倉 修 氏
ワールドテック 代表取締役、元デンソー設計開発者 寺倉 修 氏
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 前回は、設計の役割について述べた。今回はその設計の役割から導かれる設計力に取り掛かる。

 設計の役割は、まず顧客からのニーズ、すなわち商品仕様(必要条件)を把握し、製品仕様(十分条件、以下「設計目標値」と呼ぶ)に置き換える。そして、設計目標値を達成する方法・手順・構造・材質などを定量的に明らかにすることだ。顧客からの要望はあいまいな部分が多いので、その部分を解決して作り上げる取り組みとも言える。この定量的に明らかにした情報を「見える化」したものが図面だ。図面という伝達手段で情報を設計段階から製造段階へ伝える。

 設計の役割を踏まえると、「設計力」は「顧客からのニーズを製造段階へ伝えるまでの活動で発揮される力」と表現できる。しかし、これだけでは物足りない。製造段階では多くの場合、間違った情報に気付かずに、図面を100%「もの」という形に加工する。従って、設計段階では情報の誤りを限りなく少なくする取り組みが大切だ。設計力を表す言葉にはこの取り組みが反映されなければならない。すなわち、設計力とは「顧客からのニーズを製造段階へ伝えるまでの活動を『やりきる力』」となる。

 そう、「設計力」には「やりきる力」が大切なのである。日々の活動につなげるには、「やりきる力」を具体化しなければならない。