ワールドテック 代表取締役、元デンソー設計開発者 寺倉 修 氏
ワールドテック 代表取締役、元デンソー設計開発者 寺倉 修 氏
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 北海道の民間企業であるインターステラテクノロジズ(本社北海道・大樹町)が、開発したロケットを2017年7月末に打ち上げた。目標高度には到達せず、「失敗」とメディアは報じた。だが、これはまさに「成功への第一歩」を踏み出したのだ。自動車部品の開発と同じで、何度か挑戦することで一歩一歩成功に近づいていく。2回目の打ち上げの発表が待たれる。このニュースを猛暑における“一服の清涼剤”と感じた方もいるだろう。同年8月に入り、周りはどことなく連休の雰囲気を帯びてきた。今回は、常夏の国での経験を紹介したい。

 10年ほど前、私はマレーシアを訪問した。東南アジアの自動車部品メーカーの現状を調査するためだ。マレーシア工業開発庁(MIDA)の大阪事務所所長や、クアラルンプール本部の多くの方に支援していただいた。

 マレーシアでは当時、自動車を国産化すべしとの基本方針があり、東南アジアで唯一一定規模の自動車メーカーが存在していた。その1つが国策メーカーのProton社であり、もう1つはダイハツ工業が資本参加しているPerodua社だった。当時はこの2社で、年間35~40万台の乗用車市場のうちの70~80%を占めていた。かつてはProton社が圧倒的に優勢だったが、Perodua社が次第にシェアを伸ばし、2006 年には逆転に至っていた。

 私がマレーシアの自動車部品メーカーを訪問したのは、国策で自動車産業の育成を行っているのだから、自動車部品メーカーもそれなりの水準だろうと期待したからである。実際、多くの自動車部品メーカーがあり、バンパーからステアリング、エアコン関係まで幅広い品目が生産されていて、驚くほど地場企業の裾野が広がっていた。やはり、マレーシアの成長はすごいと感じた。

 一方で、まだまだ改善すべきことはたくさんあるとも判断した。各自動車部品メーカーで技術者と意見を交換し、かつ現場を見せてもらった結果だ。Perodua社の社長にも会ってマレーシアの現状について話を伺った。すると、重要部品をマレーシア現地企業から調達するには課題が多い、ということだった。そして、すぐにそのことを納得する体験をした。