ワールドテック 代表取締役、元デンソー設計開発者 寺倉 修 氏
ワールドテック 代表取締役、元デンソー設計開発者 寺倉 修 氏
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 株主総会の時期を迎えた。株主総会の案内には、1年間の企業活動の結果が書かれている。いわば、その企業の通知表だ。図や表、グラフを使い、視覚的にも株主が理解しやすい工夫が施されている。「これからもごひいきに」との企業側の思いが込められているのだろう。

 そうなのだ。資料は読み手が理解できてこそ存在理由がある。職場も同じで、上司やお客様が資料の内容を理解して初めて仕事が進む。理解を促すには資料を工夫する必要がある。デザインレビュー(DR)や決裁会議、客先への報告会など職場で扱う資料は数多くあるが、ここではDRで使う資料について取り上げよう。

 既に本コラムで、DRのメンバーが議論の内容を理解できなければ気づきはない。次のような工夫が必要だと述べた。

・生データのみの資料は論外。生データは、安全率や余裕度、理論と試験実験結果の整合を示す根拠として使う。
・1つの課題に対しては、検討手法と理論解析、試験・実験結果までを1枚にまとめる。複数枚を使って表すことは作成側にとっては比較的簡単だが、逆に、聞く側は理解しづらい。
・資料にはストーリー性を持たせる。多くの資料をばらばらに説明しても、聞き手が理解することは難しい。特に、プロセスの節目に行うDR(節目DR)では、議論する内容が多岐に渡る。従って、多くの検討課題を1本の資料としてまとめることが非常に大切である。

 では、「ストーリー性を持つ資料」とはどういうものだろうか。実は、きちんと理解している設計者は意外に少ない。そこで、節目DRの中で最も重要な「1次DR」の資料のありようについて紹介しよう。1次DRは詳細設計に関する議論であり、設計目標値を達成する、言い換えれば品質とコストの目標値を100%達成するための活動である。そのため、最も重要なDRと位置づけることができる。(なお、構想設計についての議論は0次、量産工程設計についは2次DRとなる。)