ワールドテック 代表取締役、元デンソー設計開発者 寺倉 修 氏
ワールドテック 代表取締役、元デンソー設計開発者 寺倉 修 氏
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 大手自動車メーカー7社の2017年3月期決算は、トヨタ自動車を含む3社が減益となった。トヨタ系部品メーカーも数社が減益だった。とはいえ、決算結果は過去のことで、各社は既に2018年3月期決算へ向けた取り組みをスタートさせている。製品・部品の原価管理には一層力が入るだろう。今回は「原価管理」と「設計力」の関係を取り上げよう。

 「原価」とは、企業が経済行為を営む上で必要な開発や製造、販売、サービスなどの諸活動によって発生する総費用のことだ。「原価管理」は、企業の安定的な成長・発展を図るための利益管理活動の一環であり、次の活動を行う。

[1]適正な原価目標を設定する
[2]現状(未来)原価を正しく把握・認識(予測)する
[3]目標とのギャップを解消するための適切な処置する

 原価管理活動は、「原価企画」と「原価改善」に分かれる。前者は「流動前製品」を対象に、「今後発生が予測される原価」を取り扱う。後者は「流動中の製品」を対象に、「既に発生している原価」を取り扱う。

 「流動前製品」が対象の場合は、あるべき売価と必要利益から原価目標を設定する。すなわち、「売価-利益=原価(目標)」と表現できる。一方、「流動中の製品」を対象にする場合は、原価を低減して利益を確保する。すなわち、「売価-原価(低減)=利益」となる。

 これらの式から分かることは、流動前製品を対象にする「原価企画活動」は、「設計力」の取り組みそのものであることだ。設計力とは、製品仕様「Q」、原価「C」、納期「D」を“120%”の品質でやり抜く活動だ。その「C」に焦点を当てた設計力の取り組みが、原価企画活動なのである。

 設計、製造、企画、調達、品質保証、営業などの関係部署が協力し合い、コストミニマムを追求し、「目標原価の造り込み」を行う。関係部署が「横断的チーム」を組み、「原価企画会議」で、その活動のアウトプットを審議する。

 例えば、1次原価企画会議で、原価目標の設定と関係部署への目標値の割り付け、推進日程の確認を行う。続くN次(第2回以降の)会議では、改善状況の確認や問題点の審議、原価企画目標の割り付けの見直しなどを行っていく。一方、横断的チームは、「設計仕様の検討」や「生産仕様の検討」、「調達仕様の検討」、「目標達成度の評価」といった活動状況を原価企画会議に報告する。こうして、市場から要求される売価と職場の対応力とのギャップを埋めていく。