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 大阪市阿倍野区にあるシャープの旧本社ビルの解体作業が始まった。社名が早川電機だった頃に、私の父が小さな協力工場を営んでいた。今になっても懐かしく、取り壊されると聞くと一抹の寂しさを感じる。どこかのタイミングで判断に何らかの間違いがあったのだろう。

 タカタが法的整理か私的整理かで揺れている。将来に不安を覚えている協力工場は少なくないはずだ。これも間違った判断が引き起こした結果なのだろう。

 少し前になるが、『日経Automotive』の2015年9月号にタカタのエアバッグのリコール問題が特集されていた。それによると、「ガス発生剤を入れる容器(インフレ―ター)を設計的に密閉できるとタカタは判断した」という主旨の記事が書かれていた。だが、自動車部品は温度差の厳しい環境にさらされる。密閉構造を実現することは容易ではない。

 経験上、私はこのような部品の設計思想は「漏れることを基本にすべきだ」と考える。仮に密閉構造を狙ったとしても、漏れた場合の最悪の故障モード(以下、「トップ事象」と呼ぶ)が重致命故障に至らない設計処置とその検証が必要だ。例えば、フェールセーフ設計や2重故障系の設計などの安全設計を施さなければならない。

 こうした設計対応(以下、「必要十分な設計対応」と呼ぶ)を踏まえ、設計の妥当性を判断すれば、判断における誤謬(ごびゅう:誤り)の可能性は低くなる。実は、第5の設計力は「判断基準」だ。この判断基準を取り上げる前に、必要十分な設計対応についてもう少し考えてみよう。