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アフター2020、未来からの逆算

大学スポーツの改革は、なぜ未来を切り拓くのか

ドームが考えるスポーツ産業化への道(その2)

2017/08/25 05:00

三沢 英生=ドーム 取締役

米アンダーアーマーの日本総代理店であるドーム 取締役の三沢英生氏が語るスポーツ産業化への道の第2回。同氏が今、最も精力的に取り組んでいるのは、大学スポーツ改革だ。ドームは、昨年から関東学院大学や筑波大学、近畿大大学などとパートナーシップ契約を締結し学生スポーツの改革プロジェクトを進めている。なぜ、大学スポーツなのか。そして、改革の先に何があるのだろうか――。

ベスト・イン・クラスの布陣で臨む

 2017年1月に、私は母校・東京大学のアメリカンフットボール部(以下、東大フットボール)の監督に就任しました。東大フットボールは今年、創部60周年を迎え、私も学生時代に鍛錬を積むことに明け暮れたチームです。監督に就任して最初に取り組んだことは、チームが掲げる理念についてです。

 魅力的なチームというのは、世界的に見てもチームごとにぶれない理念を持っています。私は東京大学について改めて勉強し、そして「東京大学とは何か?」をひたすら考えました。キャンパスに足を運び、OB・OGや学生と話し、客観的、主観的に東京大学を考え、再び人々の意見を聞いてまた考える…。そんな日々を1~2カ月の間、過ごしました。そしてたどり着いた結論が、「未来を切り拓くフットボール」という理念です。東大は、1877年の大学創立から開国後の混沌とした社会で、有能な人材を集めて日本を改革・けん引する人材を育成し輩出してきました。つまり「未来を切り拓くため」に優秀な指導者や学生が集められ、設立されたのが東京大学だったわけです。

三沢英生氏。今年、東京大学アメリカンフットボール部の監督に就任した(写真:ドーム)

 この歴史に根差した理念の下、「ベスト・イン・クラス(ベストの人材配置)」の布陣で臨みます。この理念を達成するため、監督として胸を張ってチームのミッションを日本一に据えたい。そして日本一を目指すに当たっては「世界基準(グローバルスタンダード)」のメソッドを導入します。現場の指揮官であるヘッドコーチには、日本代表ヘッドコーチの森清之さんを招聘しました。彼は、京都大学在学中に選手として日本一を勝ち取り、その後はプロコーチとして京大やアサヒビール、アサヒ飲料、鹿島、LIXILと学生と社会人の両方でチームを何度も日本一に導いた名将です。

 最高のスタッフはもちろん、米国の超一流大学が行なっているアスレチックプログラムを導入し、大学スポーツの改革をリードしていきたい。チームのガバナンスやリスクマネジメントなどを整備することで、選手が思う存分暴れ、成長することのできる最高の環境をつくっていきます。

 ドームは東大フットボールをはじめ、チームビルディングを通じた大学改革に向けて動き出しています。「ボトムアップ型」のチームビルディングというアプローチで学校を変えていく仕組みは有効な手段となります。

 昨年、ドーム代表取締役の安田秀一が法政大学アメリカンフットボール部の監督に就任し、個別チームを成長させるチームビルディング・プロジェクトによるボトムアップ型の改革を進めてきました。すでに、法政フットボールの取り組みは、日本の大学スポーツ界で大きな波紋を生み出しています。法政フットボールとともに東大フットボールでも示している「こうやって変わるんだ」という取り組みと軌を一にするように、スポーツや東京大学医学部付属病院(東大病院)を担当する境田正樹理事ら東京大学関係者が積極的にスポーツを活用して大学改革を断行しようとしています。今春の卒業式で五神真総長が卒業生に送った告辞の内容の、実におよそ半分がスポーツについてでした。東京大学の総長がスポーツの話に多くの時間を割くこと自体、大きなうねりを感じます。

 ドームが大学をはじめとする学生スポーツの改革に力を入れる理由は、それが日本のスポーツビジネス、ひいては日本社会全体の改革につながっていくからです。そのためには、学生スポーツのリスクマネジメントとガバナンスを徹底した上で収益化を目指します。

 特に、東京大学が変われば、日本中の大学が確実に後を追うでしょう。東大フットボールの改革は、日本全体をワクワク、そわそわさせ、大学スポーツ改革の端緒となる。資源のない日本では、人材こそが全て。スポーツを通じた大学改革は、教育の改革であり、日本の改革の本丸でもあるわけです。

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