米アンダーアーマー社の日本総代理店を務めるドーム(東京・江東区)を率いる安田秀一氏(取締役会長兼代表取締役CEO)へのインタビュー。前回は、「日本のスポーツ界、スポーツ産業の課題をどう捉えているか」「2020年の東京オリンピック・パラリンピック(オリパラ)に向けて何をすべきか」について、「ベスト・イン・クラス(Best-in-class)」というキーワードで解決の方向性を語った*1

 今回は連載のテーマである東京オリパラ以降、つまり「アフター2020」の日本スポーツ産業の姿について、その可能性を聞いた。日本にはスポーツ産業の規模を広げられるポテンシャルがあるのか。そして、そのカギとなるポイントはどこにあるのか。

 「スポーツを通じて社会を豊かにする」という企業理念の下、独自の哲学で成長・躍進を続けているドーム。安田氏の言葉からは、地域密着を軸にしたスポーツビジネスの本質、それを具現化するカギとなる学生スポーツの課題などを通して、日本社会を変革していくためのヒントが次々に浮かび上がってくる。(聞き手は、上野直彦=スポーツライター)

ドーム 代表取締役 CEOの安田 秀一氏。(写真:加藤 康)
ドーム 代表取締役 CEOの安田 秀一氏。(写真:加藤 康)
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日本には、十分なポテンシャルがある

―― 東京オリパラが終わった後、つまり「アフター2020」の日本のスポーツ産業をどう見ていますか?

安田 これから2020年までの4年間で変わることができるのなら、いい方向に向かっていくでしょう。仮に、現状のダメなままで進んでいくのなら大会はメチャクチャになるでしょうね。

 では、どっちを選ぶのか? マスコミも含めてもっと議論してほしいのです。自分たちが未来に対して責任ある活動にどう取り組んでいくのか。2020年の東京オリパラは、日本社会を革命的に変革していくチャンスです。その問題意識について、多くの皆さんに問い掛けたい。

―― なるほど。現状のままでは、厳しい結果が待っているということですね。例えば、米国のプロアメリカンフットボール「NFL」のチャンピオンチームを決める「スーパーボウル」はスポーツとエンターテインメントが融合したイベントとしては世界最高峰で、巨大産業に成長した米国のスポーツビジネスを象徴しています。安田さんの目から見て、日本のスポーツ産業には同じように発展できるポテンシャルがあるでしょうか。