フラットパネルディスプレー(FPD)の4台に1台は、中国メーカーが製造、出荷するようになった。テレビ用の大型パネルだけでなく、スマートフォン(スマホ)用の中小型パネルでも、中国メーカーの台頭が目覚ましい。中国メーカーは、液晶に続き、有機ELにも高い関心を示している。また、テレビやスマホに続き、車載機器やVR端末の市場開拓に早くも乗り出そうとする動きが見える。

講演する梁新清氏
講演する梁新清氏
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 今、中国ディスプレー産業は何を考え、どう動こうとしているのか。中国のディスプレー産業の業界団体「中国光学光電子行業協会液晶分会(CODA)」で秘書長を務める梁新清氏が、2016年8月に上海で開催された「Display Innovation CHINA 2016/Beijing Summit」の事前説明会で、「ディスプレー業界の展望」と題して講演した。その内容は、中国のディスプレー産業の現在位置を理解し、今後の戦略を読み解く上で重要な示唆を与えるものだった。以降では、梁氏の講演内容を紹介する。

4台に1台は中国のディスプレー

 梁氏はまず、ディスプレー産業の現状について説明した。2016年上期の世界のFPD市場の成長率(前年度比、出荷面積ベース)は1%未満と、横ばいだった。出荷面積を国・地域別に見ると、1位が韓国でシェアは約37.3%。2位は台湾(同27.6%)、3位は中国(同26.8%)だが、その差はわずか1%未満。4台に1台のディスプレーは中国の工場で製造、出荷されていることが分かる。なお、4位は日本で同4.5%。日本の競争力の中心は既にパネル製造からパネル技術や部材・製造装置にシフトしていると、同氏は指摘した(図1)。

図1 2016年上期の世界のパネル出荷面積(単位は万m<sup>2</sup>)
図1 2016年上期の世界のパネル出荷面積(単位は万m2
(出所:梁氏の講演資料)
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 足元の市況については、パネル価格の下落が終息し、パネルメーカーの業績が黒字に転じつつあると述べた。ディスプレー業界は2015年第3四半期から調整期に入っていたが、2016年第2四半期から回復し始めたという。これに合わせて、好況と不況のサイクル(液晶サイクル)が短くなり、また好不況の波の振幅は小さくなってきていると、同氏は指摘した。これにより、液晶サイクルの影響を小さくするための対策は今後変えていく必要があるとした。