康得新複合材料(Kangde Xin Composite Material社:KDX)は2001年8月創業の、中国のディスプレー用光学フィルムメーカーである。同社は、先端ポリマー材料、新規スマートディスプレー、インターネットスマート応用、新エネルギー自動車の4つの分野を対象に、プレコート材料、オプトエレクトロニクス材料、裸眼3次元(3D)ディスプレー、応用システムの4つの事業を柱にする。現在、9つの研究開発センター、6つの生産拠点、23の子会社、そして世界80カ国・地域にオフィスを持ち、中国の代表的な“産業プラットフォーム企業”を自認する。なお、同社は深セン証券取引所の中小企業向けの市場「中小板」に上場しており、幹部や社員は自社株を持つ。

 この5年間の研究開発とリソース統合により、同社はオランダRoyal Philips社と協業し、特許技術を共同で共有している。また、Philips社の3D技術開発事業からのスピンアウトで生まれたオランダDimenco Displays社を買収し、3Dの欧州の研究開発プラットフォームを構築、裸眼3Dディスプレー分野に乗り出した。このほか、康得新は超大型サイズのタッチパネルモジュールの研究開発および販売をしている。高い透過率と低抵抗を両立したITOフィルムを採用している。さらに、バックライトモジュールや、フレキシブル基板に使う高付加価値フィルムも提供している。同社 董事兼主席執行官の徐曙氏に、今後の事業戦略を聞いた。(聞き手は、田中直樹=日経エレクトロニクス)

――2015年の事業の成果は。

康得新複合材料 董事兼主席執行官の徐曙氏
康得新複合材料 董事兼主席執行官の徐曙氏
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 第1に、裸眼3Dディスプレーの新技術と産業発展については、関門を越えるような進展を果たしました。2015年4月、「長虹通信」と共同で世界初のハイレゾ裸眼3Dスマートフォン「CHANGHONG X6」を新製品発表会で公開しました。また、康得新の新しい裸眼3Dソリューションを採用した、「創維」(Skyworth社)の裸眼3D広告ディスプレーが発売。さらに、「梦牌集団」の裸眼3Dテレビも2015年に市場に投入されました。同時に、康得新は「華為」(Huawei社)や「聯想」(Lenovo社)など十数社の企業と商談を進めており、共同で3D製品を開発しています。また、複数の日本のアーケードゲーム機企業と協業し、日本の3D技術の進化と市場立ち上げを推進しています。2016年に製品を投入予定です。この他、康得新はB2B業務を推進し、デジタルサイネージ(電子広告看板)、屋外広告、医療機器などの事業開拓を進めています。この中で、中国では、高級レストラン向けの商談が順調に進んでいます。日本では、代理店を通じて、顧客や市場を開拓しています。

 3Dディスプレーの普及には重要な前提があります。映像コンテンツの制作や放送・配信まで含めた、産業チェーンやエコシステムの構築が重要です。そこで、中国7大インターネットテレビのライセンスを持つ会社の1つである「国広東方」と共同投資し、「東方視界」というプラットフォームを作りました。コンテンツを生み出すこと、そしてその制作、アグリゲーション、運営を一体で行う、3Dコンテンツ運営サービスのプラットフォームです。既に1000以上の3Dコンテンツを集めています。これにより、3D産業の発展を阻んでいたコンテンツ問題を解決しました。このように裸眼3Dのディスプレー、表示コンテンツ、応用の3つをすべて推進し、インターネット上の3Dエコシステムを作り、材料からコンテンツまで新しいビジネスモデルを構築しました。

 現在、(国の行政機関である)国務院高度重視中国電子信息産業発展および国家工業和信息化部(工信部)が先頭に立って裸眼3D産業の発展を推進しています。2016年3月29日には康得新の社内で「中国彩電産業新技術推広検討会」というイベントが開催されました。工信部の支援のもとで、康得新は裸眼3D産業のリーダーとして、ディスプレー業界やテレビ業界の大手企業と共同で裸眼3Dなどの新技術の発展を推進し、中国の電子情報産業のモデルチェンジとレベルアップを加速していきます。