ディスプレー関連事業からスタートした東旭集団(Tunghsu Group)。現在、その傘下にある「東旭光電」は中国大陸最大の液晶ガラス基板メーカーである。東旭は2016年3月1日から、第8.5世代(G8.5)のガラス基板新工場の建設に着手し、2017年に量産体制を整える予定だ。また、偏光板とカラーフィルターの量産、およびグラフェンやサファイアなどの新素材開発も積極的に推進している。この他、同グループはもう1つの上場企業である「宝安地産」を拠点とした、新エネルギー事業を開拓している。東旭集団の事業の見通しと今後の戦略について、同社 副総裁の王建強氏に聞いた。(聞き手は、田中直樹=日経エレクトロニクス)

――この1年の事業の成果は。

東旭集団 副総裁の王建強氏
東旭集団 副総裁の王建強氏
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 第1に、第8.5世代のガラス基板工場建設に着手しました。2016年3月1日に福建省福清市で着工した当プロジェクトは、グループ傘下の上場企業により、あらゆる世代のガラス基板の製造ラインを基本的にすべてカバーしただけでなく、京東方科技集団(BOE Technology Group)がそのエリアで新しく建設した第8.5世代液晶パネルの製造ラインと連携を取ることも可能にしました。さらに、中国国産の新世代ガラス基板が無いという“空白”を埋めることにもなりました。

 第2に、傘下にあるPDP用ガラス基板の製造ラインを、タッチパネル用カバーガラスの製造ラインに改造しました。これは現在中国で唯一稼働している、フロートガラス技術を利用した高アルミナカバーガラスの製造ラインです。東旭の製品である「王者熊猫」は中国初のスマートタッチ端末向けの高アルミナカバーガラス製品です。丸めるように曲げることが可能であり、現在この製品はすでに韓国のSasmungやLG、中国の華為(Huawei)や小米科技(Xiaomi)の認定を受けています。販売量は2015年から大幅に伸びています。2015年は前年の2倍となりました。また、薄型ガラスの開発にも力を入れており、2015年にはガラスの厚さを0.3mmまで薄くすることに成功しました。現在は0.2mm級のカバーガラスを開発しています。

 第3に、第6世代(G6)およびそれ以下のガラス基板製造ラインの良品率を大幅に向上させました。パネル製造ラインが次々に量産稼働したことや川下市場の開拓が順調に進んだことに伴い、2015年のガラス基板の販売量は前年比50%増を実現しました。

 第4に、日本の住友化学と偏光板関連業務の提携を始めました。韓国・東友精細化学と拓米国際有限公司も提携先に含まれています。グループ傘下の東旭光電は合弁会社の株の51%を所持しており、主導権を握っています。合弁会社の偏光板における経営生産規模は、年間2000万m2以上を目標としており、全ラインが稼働すれば、年間売上高は20億人民元以上の事業規模となるでしょう。合弁会社は2017年から量産を開始する予定です。

 第5に、グラフェンやサファイアなどに代表される新素材の開拓を始めました。現在、東旭集団はこの分野のリーダーといっても過言ではないと自負しています。グラフェンの事業化を実現するために、「内生+外延」の両輪駆動モデルを採用します。「内生式の発展」とは、グループ傘下の孫会社に当たる北京旭炭新材料科技有限公司と上海炭源滙谷新材料科技有限公司という2大プラットフォームを拠点とする、グラフェン技術の研究開発と製品化を加速することです。グループのグラフェン技術は世界をリードするレベルにあり、この2社の中間試験製造ラインは既に複数建設されています。「外延式の発展」は、孫会社に当たる北京東旭華清投資有限公司と年内に各地で設立される産業ファンドを拠点とした、優良なグラフェンプロジェクトに投資し、育成することです。グループの戦略に合致するプロジェクトであれば、良いタイミングを選んで、東旭光電に取り入れることも視野に入れています。

 サファイアについては、東旭光電が江蘇吉星新材料有限公司のM&Aを完了しました。その後、吉星は170kgの良品率が高いサファイア結晶体を世に送り出し、アジア記録を更新しています。

 第6に、新エネルギー事業プラットフォームの構築を完了させ、新エネルギー事業を始動させました。我々は上場企業である宝安地産を買収し、新エネルギー事業を発展させるための重要プラットフォームとしました。2016年初頭、宝安地産の第三者割当増資はスムーズに決議され、太陽光発電所プロジェクトへの投資規模は1.15GWに達しました。投資プロジェクト中、既に着工された案件の規模は300MWに達します。

 総体的に見ると、おそらく2017年度までは厳しい経済状況が続くと思いますが、急速に発展している東旭事業への影響は見られません。