凹でも凸でもダメ?

 ここで問題となるのは、精密部品の図面で時折見掛ける「バリなきこと」という指示です。先述の通り、加工でバリを発生させないことは不可能なので、この「バリなきこと」という指示は「発生したバリを除去せよ」ということを意味します。しかし、バリだけを除去することはできないので、面取りがついてしまいます。すなわち、角を基準に見ると凹形状になります。一方で、この面取りが不可の場合には、突出しているバリ寸法をできる限り小さくした凸形状になります。

 何が言いたいかというと、「バリなきこと」という指示では、加工者も検査員も「凹形状が許されるのか、凸形状が許されるのかが分からない」ということです。面取り加工した場合には「バリだけを取ってほしい。面取りはNG」と指摘されます。逆に、面取りは不可と判断してバリを最小にしても、「バリなきことと指示しているのに、バリが残っているからNG」というクレームが出てしまうのです。

 この混迷の原因は、明らかに「図面指示の曖昧さ」です。従って、「バリなきこと」という指示は禁止です。凹形状となる面取り寸法(例えば、C0.05以下)か、もしくは凸形状となるバリ寸法(例えば、バリ寸法0.05以下)を具体的に数値で指示しなければなりません。過去の図面(流用図面)を使用する場合に「バリなきこと」という記載があれば、その都度改訂するようにしてください。