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 創造性は何もないところからあっと驚く画期的なアイデアを出すことではなく、「既存のものの組み合わせ」であること。そして、そのためには既存のことを「知っておく」、すなわち知識を蓄積することが大切だ──。前回のコラムでこう説明しました。今回は、次のステップとして「既存の組み合わせ」について紹介したいと思います。

 組み合わせといっても、単に目の前にあるAとBを組み合わせればよいというわけではありません。新たなアイデアを生み出す上で、何と何をどのように組み合わせるのかがポイントです。この組み合わせに法則があればよいのでしょうが、残念ながらそうしたものは存在しません。逆に言えば、もしも法則があった場合、誰もが同じ答えを出すことになります。それではひらめきやセンス、創造性とは言えませんよね。

 私は、この組み合わせに重要なことは、思考の手順ではなく、思考するときに自分のスタイルを持つことだと思っています。私のスタイルは、こだわりの「場所」で思考することです。会社の机で考えが出てくればよいのですが、なかなか出てこない。こうしたとき、私は場所を変えることで考えが進みます。

 英単語を覚えるとき、静かな机上より雑音の入り混じった通勤・通学時の電車内の方が効率が良いということはありませんでしたか。私は場所が与える影響というのはとても大きいと思っています。私のお気に入りの場所は、技術者時代には会社近くの公立図書館でした。今は電車や新幹線の中、ビジネスホテルです。理由はよく分からないのですが、これらの場所に来ると頭の中のモヤが晴れて、すっきりと集中できるのです。この連載コラムの多くも車中で書いています。