ジン・コンサルティング 代表、生産技術コンサルタント西村 仁氏
ジン・コンサルティング 代表、生産技術コンサルタント西村 仁氏
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 先月、2社の生産現場で新たに導入されたロボットを見る機会がありました。最近は政府が生産性向上を大きなテーマに掲げていることもあり、その企業は導入したロボットに大きな期待を寄せているようでした。私は電子部品メーカー在職中に生産設備開発に携わっていたので、この2社の生産現場を興味深く見たのですが、ロボットの動きにとても違和感を覚えました。

 ロボットは連続ラインではなく独立したスタンドアローンで、治具に固定したワークの取り入れ・取り出しを作業者が行うタイプでした。ロボット本体は1社が垂直多関節ロボットで、もう1社が水平多関節ロボット。違和感を覚えたのは、次のような点です。

・各動作のたびに一旦停止して待ち時間がある。
・同時に動かせる機能があるのに1つずつ順番に動かしている。
・数回に1回行えばよい動作を毎回行っている。
・障害物を避ける動作にアーチモーションを使っていない——。

 ひと言で言えば「もったいない」ということになります。

 プログラムの修正により動作のムダをなくすだけで、生産性を1.5倍以上にできることは明らかです。これは技術者ではなくても分かることなので設備担当者に聞いてみると、2社ともに生産技術者がいないため、社外の機械設備メーカーに依頼して導入しており、自社ではプログラムの変更ができないとのことでした。加えて、設備導入後にさまざまな追加仕様が発生し、導入直後はメーカーのアフターサービスで対応してもらえたが、追加があまりにも多いために以降は有償対応となった。しかし、そこにコストを掛けることができず、動作を変えることができなかったというのが実態でした。