ジン・コンサルティング 代表、生産技術コンサルタント西村 仁氏
ジン・コンサルティング 代表、生産技術コンサルタント西村 仁氏
[画像のクリックで拡大表示]

 これまで「効率良くものをつくる」ための管理技術として、QCD(品質、コスト、納期)のうち「品質」と「コスト」について紹介してきました。今回は最後のD、すなわち「納期)についてお話しします。Dはdelivery(デリバリー)の頭文字をとったもの。製品は顧客が希望するタイミングで納入することが必要です。間に合わなければ、顧客は他社に乗り換えてしまいます。

 従って、現場ではいかに「納期に間に合わせるか」が大きな課題となります。この課題を比較的簡単に解決できるように思える方法があります。それは、あらかじめ製品を造っておいて在庫として積んでおく、という方法です。この方法だと、どのタイミングでも製品を納品することができ、納期に間に合わないことがないので安心のように思えます。しかし、この方法には多くの問題があります。結論を言えば、在庫を持つというこの方法は、利益を圧迫して好ましくありません。

 在庫を持つということは、まずは在庫を置く場所を確保しなければなりません。大量の在庫を抱えれば、在庫用の倉庫が必要になってしまいます。加えて、在庫数量の管理にも相当の手間と時間がかかります。また、そもそも見込みで生産するので、造った分が売れる保証はありません。売れなければ製品はどんどん陳腐化していきます。身近な家電製品などは半年ほどで旧モデルになってしまいます。売れ残りを処分しようとすれば売価を下げるしかありません。

 また在庫の財務的な問題としては、在庫品にはコストが掛かっているので、在庫はお金を寝かせていることになります。そのため資金繰りも悪化し、本来ならそのお金で新しく開発を行ったり、新規の設備を導入したりできるかもしれないのです。以上のように在庫には多くの弊害があるのです。

 では、たくさんの在庫を持たずに納期に対応するにはどうすればよいのでしょうか。