ジン・コンサルティング 代表、生産技術コンサルタント西村 仁氏
ジン・コンサルティング 代表、生産技術コンサルタント西村 仁氏
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 「効率よくものをつくる」ための管理技術は、ものづくりの現場の基本であるQCD(品質、コスト、納期)の維持と改善を行うためのものです。前回まで数回にわたって品質管理の話をしてきました。今回はコストを管理する「原価管理」を紹介します。

 まずお金の流れをつかむために、会計の大枠を見てみましょう。会計には[1]「財務会計」、[2]「税務会計」、そして[3]「管理会計」、の3つがあります。[1]の財務会計を一言で言うと、会社の1年間の“通知簿”です。1年間に利益をどれくらい得ることができたのかを、会社に入った金額(収益)と、出ていった金額(コスト)の差額から算出します。ただし1年間では期間が長すぎる場合もあるため、3カ月ごとの四半期決算、半年ごとの半期決算(中間決算)も行っています。上場企業の場合、これらは一般に公開され、誰でも見ることができます。

 [2]の税務会計は、法人税を計算するための会計です。この税務会計と先の財務会計は会計の方法が商法や法人税法といった法律で決まっており、そのルールを逸脱した処理を行うと罰せられます。ちなみに、財務会計が正しく処理されているかどうかをチェックするのが公認会計士で、税務会計をチェックするのが税理士です。

 そして、[3]の管理会計が今回の本題となります。先の2つの会計が結果を社外に発信するのに対し、管理会計は社内で運用します。そのため、管理会計を実施するか否かもどのような方法で行うかも全く自由で、法的な義務はありません。管理会計の目的は、経営判断を下すためです。重点を置く製品や、売価の妥当性、コスト削減の方策、設備の導入可否などを判断するために活用します。

 以上が財務会計と税務会計、管理会計の概要です。でも、ものづくりの現場の立場からすると、全てを把握しておく必要はありません。財務会計と税務会計は財務部門や経理部門に任せてしまい、管理会計をフルに活用しましょう。