ジン・コンサルティング 代表、生産技術コンサルタント西村 仁氏
ジン・コンサルティング 代表、生産技術コンサルタント西村 仁氏
[画像のクリックで拡大表示]

 考えるときはアナログで整理し、その後の実務はデジタルで処理する、ということを前回のコラムで書きました。これに関連し、今回はものづくりにおけるITシステム(情報システム)について考えてみたいと思います。

 コンピューターを使ったITシステムは、今や多くの業界でなくてはならないものになっています。人手の作業に比べて圧倒的なスピードで大量に処理できることが最大の特徴です。身近な例では、文書を送る際に、昔は手で書いた用紙を1枚ずつFAXで送信していました。これが今ではキーボードを打って文章にしたものを瞬時に送信する電子メールに置き換わっています。製図も手描きからCADシステムに移りました。

 ものづくりの現場向けにも、さまざまな管理システムが市販されています。皆さんの周りでも、日程管理や在庫管理、品質管理、生産管理といった分野の生産性を高める手段として活用されていると思います。これらのシステムを導入するときに意識しておかなければならないことを、ここで確認しておきましょう。

 ITシステムは情報の処理に絶大な効果があります。人が行うと多大な時間がかかる計算などの作業を、瞬時に正確に処理してくれます。ただし、注意しなければならないのは、正確に処理するものの、決して「仕組みの問題」を解決してくれるわけではないということです。時折、「高価なITシステムを導入したのに効果が出ない」という声が日本企業から上がります。「計画を立ててもいつも遅れが発生するので、日程管理システムを導入した。だが、相変わらず遅れが出ている」とか、「常に在庫が積み上がってしまうので在庫管理システムを導入したが、在庫は積み上がったままだ」といった具合です。