ジン・コンサルティング 代表、生産技術コンサルタント西村 仁氏
ジン・コンサルティング 代表、生産技術コンサルタント西村 仁氏
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 「考えがまとまらないときや忙しくて何から手をつけたらよいか分からないときには、とにかく紙に書き出すとよい」。先日、あるビジネス誌でこうした記事を読みました。ちょうど若手技術者対象のセミナーで、私も同じ趣旨の話をしたところでした。この「考えを紙に書き出すこと」はとても役に立ちます。

 当然、考えることは頭の中で行います。しかし、なかなか良い答えやアイデアは浮かばないものです。考えていても堂々巡りをしてしまうという経験を皆さんも持っていませんか? こうしたときには「書き出すこと」をお勧めします。こうすることで、見えない頭の中の思考が見えるようになるからです。これを可視化とも言います。思考全体が見えることにより、考えを追加したり削除したり、拡大したり縮小したり、順番を変えたり他と組み合わせたりと、いろいろなアレンジが可能になります。また紙に書き出せば、 第三者にも見えるようになるので、アドバイスをもらうこともできます。

 では、頭の中で考えたことをどのように書き出すのか。何か最新のツールを使うのか。特に創造性が求められる仕事に携わるプロフェッショナルの人の方法をウォッチングしてみました。最もシンプルに「紙」に「手書き」しています。例えばデザイン。フェラーリのデザインを担当した著名な工業デザイナー奥山清行氏の著書「ムーンショット・デザイン幸福論」(ランダムハウスジャパン社)には、クルマやバイク、家具、家電のデザインがCAD図面ではなく手書きのスケッチであふれています。またNHKのドキュメンタリーで人気の音楽バンドの作曲風景を紹介していましたが、ここでも音楽ソフトウエアを使わずに鉛筆で音符を楽譜に書き入れていました。作家にも原稿用紙の手書きにこだわっている方が多数いると聞きます。