西村 仁=ジン・コンサルティング 代表、生産技術コンサルタント
西村 仁=ジン・コンサルティング 代表、生産技術コンサルタント
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 本コラムでは最近、数字がたくさん並んだ少々堅苦しい内容が続きました。今回は肩の力を抜いて読める内容にしましょう。「物」同士を接合する話です。接合の方法にはさまざまなものがあります。身近な文房具には「のり」や「接着剤」、「ステープラー(ホチキス)」があります。木工材料には「釘(くぎ)」を使い、工業製品では「ねじ」や「溶接」、「リベット」、そして太めのピンを穴に打ち込む「圧入」などがあります。それぞれに特徴があり、接合した材料を着脱できる「ねじ」は世紀の大発明として有名です。

 先日、「ねじとねじ回し~この千年で最高の発明をめぐる物語~」(ヴィトルト・リプチンスキ著、春日井昌子訳、ハヤカワ文庫)という本を読みました。そこに「ボタンとボタン穴」が紹介されていました。ボタンはもの同士を固定することはできませんが、つなぎ合わせるという機能を持ちます。ボタンがない衣類はあまりないほど浸透しています。

 これほど生活に根付いているボタンは、大変シンプルな構造です。ところが、自分でボタンとボタン穴を設計しようとすると、予想以上に難しいことに気づきます。

・ボタンの直径はどれくらいの大きさが使いやすいのか
・留めやすく外しやすいボタン穴の大きさはどのくらいが最適か
・ボタンの形状は丸形がよいのか多角形がよいのか
・ボタンの厚みはどのように影響するのか

 他にもいろいろと疑問点は浮かびます。インターネットで調べると、ボタン穴は「ボタンホール」と呼び、一般的な目安は、「ボタンホール寸法(穴の長さ)=ボタンの直径+ボタンの厚み」だそうです。これは面白いなと思い、自分の服で調べて見たところ、スーツのボタンホールは穴の向きが横穴なのに対して、カッターシャツの穴は縦穴であることに初めて気がつきました。