材料知識を学ぶ目的は、開発技術系の皆さんにとっては「いかにして最適な材料を選定するか」であり、間接部門の皆さんにとっては「なぜその材料が選ばれたのか」を理解するためです。どちらも「選定」がキーワードになります。
この選定は、多くの種類の中から「品質」だけではなく「価格」と「納期」を含めた3つの要素を同時に満たす材料を選び出す作業になります。必要とする品質を満たし、1円でも安く、欲しい時にすぐに入手できることが必要です。
しかし、設計するたびに一から機械的性質を検証したり、市場価格を調査したり、納期を確認したりしていたのでは、とてもスピードに対応できません。おまけに、これらの検討や調査の時間に掛かるコストも上昇してしまいます。
こうした事態への対応策が「材料の標準化」です。
設計のたびに考えるのではなく、「事前に使うべき材料を決めておく」のです。「この仕様にはこの材料を使う」とあらかじめ決めておけば、材料の選定時間は「ゼロ」。設計者は考えるべきことが山積みです。従って、毎回考えることに意味を持たない(付加価値がない)ことは標準化を利用してあっという間に選定し、その他の本来考えるべき(付加価値の高い)ことに集中できる体制をつくるべきです。
では、どのように材料の標準を決めるのか。これには正解がないので文献には載っていません。実践している方に聞いても「これはオリジナルだから、そのままでは使えないよ」といった言葉が返ってきます。これでは埒(らち)が明かないので、1つの事例を紹介しましょう。