西村 仁=ジン・コンサルティング 代表、生産技術コンサルタント
西村 仁=ジン・コンサルティング 代表、生産技術コンサルタント
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 これまで2回に渡って「工程能力指数(Cp値)」について紹介してきました。Cp値は業界や業種を問わず、「良品をつくる能力」を客観的に把握できることがメリットでした。

 では、現実的にどのレベルを目指すべきなのでしょうか。Cp値の4つの目安をもう1度振り返ってみましょう。つぎのようになります。

Cp値「1.67」(公差幅±5σ)は、1000万個に6個の不良レベル
Cp値「1.33」(公差幅±4σ)は、10万個に6個の不良レベル
Cp値「1」(公差幅±3σ)は、1000個に3個の不良レベル
Cp値「0.67」(公差幅±2σ)は、100個に5個の不良レベル

 ここで、一般には「1.33」を目指すことが広く知られています。では、どの生産現場もこの目安に従って品質改善を行うのがよいのでしょうか。答えは次の通りです。

「自社における生産現場改善のQCDに関する優先度で判断する」

 Cp値「1」を下回る場合は100個造れば不良が出るレベルなので、品質を改善すれば大きなコスト削減効果を見込むことができます。一方、Cp値「1」を超えると1万個造って初めて不良が出るレベルになってくるので、品質改善によるコスト削減効果は限られてきます。おまけに、この頻度で発生する不良対策の難易度は相当高いと言えます。

 無尽蔵に時間と費用をかけられるのであれば、不良の発生率は低いに超したことはないので迷わずに品質改善に取り組めばよいと思います。しかし、ビジネスの世界では常に費用対効果を考えなければなりません。つまり、費用対効果を念頭に置いた生産現場改善の切り口は「製造品質の向上(Q)」だけでなく、「製造原価の低減(C)」と「生産期間の短縮(D)」の3本柱です。品質(Q)が一定のレベルに達すれば、コスト(C)と期間(D)のテーマに取り組む選択肢も出てきます。