西村 仁=ジン・コンサルティング 代表、生産技術コンサルタント
西村 仁=ジン・コンサルティング 代表、生産技術コンサルタント
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 前回は「良品を造る能力」を表す「工程能力指数」について紹介しました。おさらいしておきましょう。例えば、学生の実力を把握する際に、「センター試験」の点数だけを聞いても判断ができません。75点だったとしても、平均点が60点の場合と80点の場合では逆の結論になってしまいます。このときに点数ではなく偏差値が60と聞けば、優れていることが瞬時に理解できます。この偏差値に相当するのが「工程能力指数」です。これにより業界や業種を問わず、ものづくり現場の実力を瞬時に把握することができます。

 では、工程能力指数の判断基準を見ていきましょう。工程能力指数は「設計値である公差」と「現場の実力であるばらつき」の比率で、計算式は

(公差の幅)/(ばらつきの大きさ)

です。これは

(規格上限値-規格下限値)/(6×標準偏差)

になります。分母の(6×標準偏差)は、これまでのコラムで紹介している「±3σ」のことです。すなわち、基準となる工程能力指数「1」とは、公差の幅とばらつきの大きさ「±3σ」と同じなので、「99.7%」すなわち「1000個造ると3個が不良」のレベルを意味します。

 これに対し、公差の幅(以下、公差幅)がばらつきよりも大きいほど余裕をもって造ることができ、反対に公差幅が小さいと相当な不良が発生することになります。公差幅がばらつきと同じ±3σが基準なので、高いレベルとして公差幅が「±5σ」「±4σ」のときと、低いレベルとして公差幅が「±2σ」の3つを分母の「±3σ」で割ると、例えば公差幅「±5σ」では、工程能力指数は「±5σ/±3σ≒1.67」です。以下同じように計算すると「1.33」「0.67」になります。